東京大学との共同研究を通じた社会貢献

2018年4月1日、日本国民の健康増進に資することを目的に、東京大学大学院医学系研究科に、社会連携講座「糖尿病・生活習慣病予防講座」を開設しました。

社会連携講座「糖尿病・生活習慣病予防講座」

この講座では、日本国民の健康増進に資することを目的に、医療ビッグデータの解析やICTの活用を通じ、『生活習慣病の予防と重症化防止に資する効果的モデルの構築に向けた共同研究』を行っております。
研究を通じて得た新たな医学的な知見を発信することで社会貢献を進めており、これまでに、複数の研究論文が医学誌に掲載されています。
主な研究論文を2つご紹介します。

主な研究

  • コロナ禍の他疾患の診療に対する影響の評価
    日本国内の26施設のデータを含むデータベースを用いて、2020年11月までのコロナ禍の他疾患の診療への影響を俯瞰的に調査した研究です。
    2020年11月までの疾患別の入院、外来、処方、処置等の件数をコロナ禍前(2017年~2019年)と比較した結果、小児科の入院、外来件数が著減し、呼吸器疾患をはじめとする入院件数や内視鏡検査、リハビリ件数が減少した一方で、化学療法や透析療法はほとんど変わっていないことがわかりました。
    今後、これらの影響について、その原因を詳しく調査し、長期的な影響も評価していくことが、他疾患の診断や治療の遅れを防ぐことにつながると考えられます。
本研究は、令和2年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化およびその健康影響の解明に向けた研究—生活習慣病の発症および重症化予防の観点から—」(JPMH20CA2046)の助成を受け、門田守人日本医学会連合会長のプロジェクトによって実施されたものです。
 
雑誌名
BMJ Open(オンライン版:2022年4月25日)
 
論文タイトル
Impact of COVID-19 pandemic on health care service use for non-COVID-19 patients in Japan: retrospective cohort study
 
著者
Satoko Yamaguchi, Akira Okada, Shinji Sunaga, Kayo Ikeda Kurakawa, Toshimasa Yamauchi, Masaomi Nangaku, Takashi Kadowaki*
  • 健診での糖尿病指摘後に医療機関受診をしない集団を機械学習により予測
    特定健診などの生活習慣病の健診を受診した成人のうち、糖尿病の診断基準を満たし受診勧奨を受けるにも関わらず医療機関を受診しない(=未受診の)人を予測するモデルを、機械学習を用いて構築した研究です。
    13個の因子を用いた従来のモデルよりも、39個の候補から機械学習を用いて選んだ4個の因子のみを用いたモデルの方が、予測性能が高く、特に健診前の12ヶ月の医療機関利用月数が少ないことが、未受診の重要な予測因子であることを発見しました。
    少ない因子で効率よく未受診を予測出来ることにより、早期にハイリスクの集団を同定して介入することが可能になり、糖尿病の合併症を抑制するための医療政策立案に役立つ可能性が見込まれます。
雑誌名
Diabetes Care(オンライン版:2022年4月18日)
 
論文タイトル
A machine learning-based predictive model to identify patients who failed to attend a follow-up visit for diabetes care after recommendations from a national screening program
 
著者
Akira Okada, Yohei Hashimoto, Tadahiro Goto, Satoko Yamaguchi, Sachiko Ono, Kayo Ikeda Kurakawa, Masaomi Nangaku, Toshimasa Yamauchi, Hideo Yasunaga, Takashi Kadowaki*

上記の2つの研究は、社会連携講座「糖尿病・生活習慣病予防講座」に所属している、あるいは過去に所属したことのあるメンバーが中心になって行った研究です。
また、これらは、外部資金の助成を受けて行ったものであり、財源の詳細については各論文中に記載しています。