トップメッセージ

「変えてはいけないこと」の必要を認識した1年

 平素より、私ども朝日生命保険をお引き立ていただき、誠にありがとうございます。2024年4月に代表取締役社長に就任しまして、おかげさまで2年目を迎えました。この間の、お客様をはじめとするステークホルダーの皆さまのご支援に対しまして、心より感謝申し上げます。
 就任1年目を振り返りますと、当社を取り巻く事業環境は目まぐるしく変化しており、その変化に柔軟に対応すべく、さまざまな変革に着手いたしました。一方で「変化への対応」ばかりを意識していると、自分たちにとって「大事なもの」を見失いがちになることもあり、あらためて「変えてはいけない普遍的価値はしっかり守っていく」必要があることを強く認識いたしました。

「私たちは何者なのか」=「経営理念」

 そういう意味で今回、会社の目指す姿、方向性を明確にするために、当社の理念体系を再整理しました。理念とは、簡単に言えば「私たちは何者なのか」を示すものだと考えています。変化の激しい時代だからこそ、一貫した「変わらないもの」である理念を明確にし、これを共有する意味があると考えた次第です。
 生命保険会社として最も大切なことは何か。それは、いつ、どんなことが起こっても確実にお客様に保障を提供することであり、会社が健全な状態で長期にわたって事業を継続していくことです。私たちがお客様に支払う保険金や給付金は単なる「お金」ではなく、お客様の生活をリスクから守るものであり、お客様の人生に伴走するものである——これは、私が社長に就任してから、従業員に向けて繰り返し、発信し続けてきたメッセージです。この、私たちの存在意義は「お客様の人生を支え続けることなのだ」という思いから「一人ひとりの“生きる”を支え続ける」を当社の使命(ミッション)と定義しました。
 そして、この使命(ミッション)を支える土台となる基本理念(フィロソフィー)が「まごころの奉仕」です。これまでも当社の基本理念として長い間掲げてきたものではありますが「お客様に対する責任」「社会に対する責任」「従業員に対する責任」という「3つの責任」を果たしていくことを企業活動のベースにする、という本来の考え方をあらためて確認することとなりました。
 これこそ、今や世界的な潮流となっている「ステークホルダー経営」に通ずるものです。そこか ら「まごころの奉仕」の内容について議論を重ねて再定義し「どんな時も誠実に、お客様に寄り添う。信頼をかさねて、社会に必要な存在であり続ける。その誇りを胸に、私たちがまた次の安心をつくっていく。」という「3つの責任」が目指す姿を具体化した言葉を含めたステートメントを策定しました。
 この理念とステートメントを役職員全員で共有し、「一人ひとりの“生きる”を支え続ける」という使命(ミッション)を遂行してまいります。

2030年の「ありたい姿」の実現に向けて

 社長就任とともにスタートしました2024 〜 2026年度の中期経営計画「ネクストA-『2030年のありたい姿』の実現に向けて-」ですが、おかげさまでグループお客様数をはじめとする 2024年度の各経営戦略目標を達成することができました。また、収益や健全性の面でも順調に推移しております。
 この中期経営計画では2030年の「ありたい姿」の実現を目指していますが、2030年は、私たちにとって決して「ゴール」ではありません。その先も長期にわたって「一人ひとりの“生きる”を支え続ける」ために、今なすべきことに取り組み、その一つのマイルストーンが2030年であるという考えです。
 中期経営計画における戦略の柱は「お客様一人ひとりに最適な商品・サービスの提供」です。朝日生命の「営業職員チャネル」と、なないろ生命の「代理店チャネル」等で取り組むマルチチャネル化戦略の推進により、ライフサイクルが多様化するなか、さまざまなお客様のニーズに沿った商品やサービスの実現を目指します。
 グループのメインチャネルである営業職員チャネルでは現在の保有契約をしっかり維持しつつ着実に、そしてなないろ生命は新規契約のお客様を増やす成長ドライバーとして、この2つのチャネルを軸に、グループ全体での成長を目指します。
 また、少子高齢化による国内マーケットの縮小 を踏まえ、2023年にベトナム・ホーチミン市に現地法人「朝日ライフコンサルティング・ベトナム」を設立しました。ベトナムでは2017年よりコンサルティング事業を中心に展開してまいりましたが、今年はいよいよ次のステージへの一歩として、保険代理店事業を現地でスタートしています。今後はM&Aも視野に入れながら海外事業を拡大展開し、アジアの成長を取り込むことにより、国内マーケットの補完を行う考えです。

朝日生命と子会社であるなないろ生命のお客様数の合算値。

「どんな時も誠実に、お客様に寄り添う」
~「持続可能な営業職員チャネル」の構築

 朝日生命のお客様の大半は、営業職員のコンサルティングセールスを通じて、保険に加入されています。すなわち、いざという時に、営業職員に親身に相談に乗ってもらい、丁寧なサービスを受けられることを期待されて、当社とご契約いただいているということです。私たちは、そのお客様の期待に今後もお応えし続けていかなければなりません。
 日本において、生命保険の加入経路は多様化が進んできましたが、今でも、約半数の方が営業職員から生命保険に加入されています。これは、ご契約時に丁寧なコンサルティングを行い、ご契約後もきちんとアフターフォローを続けてくれる営業職員が、現在でもお客様に高く評価されている証しです。
 営業職員の「丁寧なコンサルティングと真摯なサービス」は私たちがお客様に提供する付加価値の源泉であり、活動のやり方やサービスのレベルは時代に応じて変化するにせよ、その本質は変わりません。
 環境変化に適応しつつ、お客様サービスチャネルとしての営業職員本来の価値をこれからもしっかり発揮できるようにすること、それが営業職員チャネルを持続可能なビジネスモデルにすることだと考えています。

「信頼をかさねて、社会に必要な存在であり続ける」
~社会の課題解決への貢献

 当社では2012年に「あんしん介護」の販売をスタートし、お客様からも高い評価をいただいています。おかげさまで「介護保険といえば朝日生命」という当社のイメージも年々浸透してまいりました。超高齢化が進展する日本では「介護問題」は大きな社会課題でもあります。「公的な介護保険の不足分をカバーする」という社会的責任を果たすべく、介護保険の開発と普及に日々取り組んでまいりました。
 しかし、いまだに民間の介護保険への世帯加入率は20%程度であり、非常に「伸びしろ」があるマーケットともいえる一方で、普及が進まないのは「介護の悩みは給付金をもらっただけでは解決しない」からではないかと感じています。
 そこで今、構想を固め、開発を進めているのが「介護・認知症のエコシステム」です。保険による金銭的な保障だけにとどまらず、介護予防から改善支援、介護に携わるご家族のケアなど、それぞれのステージに合わせた介護サービス企業と連携し、介護のソリューションまで提供する。給付金をお支払いして終わりではなく、その延長線上にある介護の悩みまで解決できるようなネットワークをつくりたいと考えています。お客様にとっては、朝日生命の紹介だから信頼・安心できる。提携先の企業にとっては、朝日生命からお客様を紹介してもらえる。そして当社としては、お客様から感謝され、より付加価値を高めることができる。まさに、当社の基本理念である「まごころの奉仕」を体現するエコシステムです。これは信頼できる介護分野のプレイヤーをいかに集められるかがカギとなりますが、できるだけスピード感を持って進め、2026年度中にはスタートを切る考えです。
 「朝日生命の介護保険に入っていれば安心だ」と思えるような「介護・認知症のエコシステム」の提供は、当社が取り組むべき社会課題に、さらに一歩深く踏み込んだものになることを確信しております。
 

「その誇りを胸に、私たちがまた次の安心をつくっていく」
~ DXと人的資本投資を通じたパフォーマンス向上

 「変わらなければならないこと」として、業務効率化のためのDX施策もこれまで以上に推進していきます。具体的には「スマートアイⅡ」といった営業用端末や生成AIによる社内向け照会回答システムなどを導入しました。これにより、時間や手間のかかる作業を自動化して業務の負荷を減らし、従業員がよりクリエイティブな業務に集中できるような環境を整えてまいります。また、当社にある膨大なデータベースをいかに効果的・効率的に営業活動へ展開するかという点も、今後注力していくDX施策の一つです。働き手が減っていく未来を見据え、少ない人数で今よりも質の高い仕事や幅広い業務ができるよう、業務改革を進めてまいります。
 業務効率化と並行して、従業員一人ひとりのパフォーマンスとエンゲージメントを高めるための人的資本投資も進めています。従業員のエンゲージメントを向上させるには、ワーク・ライフ・バランスはもちろん、「仕事を通じて自身が成長できている」という感覚や、「自分の仕事が社会のために役立っている」という実感なども非常に大切な要素です。特に若い人たちには、自身が成長している実感や将来への希望を持って働いてほしい。例えば「若手社員が退職してしまう」のなら、その要因の一つは、経営陣が会社の未来図を明確に示せていないということかと自省します。
 「従業員は業務を通してお客様への信頼に応え、社会にとって必要な存在であるという誇りを、日々の業務のモチベーションにしてほしい」。これが当社の目指す「まごころの奉仕」の本質であり、これを実現することが経営者としての私の責任です。

この1年は具体的成果を出すステージへ

 振り返ってみると、社長に就任してからの1年間は「種まきの時期」だったように感じています。冒頭でもお話ししましたが、昨年度は理念体系をあらためて見直し、会社が目指す方向性を従業員と共有することに注力してまいりました。
 就任後にすぐ始めたことは、全国58カ所の支社を回り、現場で働く人たちの声を聞くことです。「2年で全国を回る」と決めて、1年でちょうど半分となる29の支社を回りました。各地の従業員から直接質問を受け、時には膝を突き合わせて議論し、懇親会でお酒を酌み交わすことで、彼らが現場で日々感じている本音を聞くこともできましたし、私の思いをダイレクトに伝えることもできました。
 朝日生命の社長として心がけているのは、「ブレないこと」。会社として大事にしたいこと、そして会社がありたい未来図について、昨年度決めた方向性がブレることのないよう、各ステークホルダーに発信を続けていきます。
 そして、この2年目からは、経営理念を日々の業務や会社の取組みにどのように落とし込んでいくのか。具体的な成果としての「芽」が出るように、少しずつステップを進めながら取り組んでいきます。
 すぐに結果が出るものばかりではありませんが、「一人ひとりの“生きる”を支え続ける」を朝日生命グループ全体の使命(ミッション)と位置づけ、すべての企業活動がこの使命(ミッション)につながるよう取り組んでまいります。
 ステークホルダーの皆さまには、今後とも変わらぬご支援・ご愛顧を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
代表取締役社長