トップメッセージ

アウトサイダー(第三者)の眼とインサイダー(当事者)の力で
グループとしての成長を目指す

長期的な視点で健全な成長に取り組む

 2024年4月に代表取締役社長に就任いたしました石島健一郎でございます。平素は朝日生命保険をお引き立ていただき、誠にありがとうございます。この場をお借りして、各ステークホルダーの皆さまにご挨拶申し上げます。
 1988年に入社して36年間、経営企画部や代理店事業本部等さまざまな部門を経験しながら朝日生命とともに歩んでまいりました。2021年4月からはグループ傘下のなないろ生命保険の社長に就任し、「乗合代理店」という当社にとって新しいチャネルの立ち上げと展開に携わりました。おかげさまで、乗合代理店市場でなないろ生命の新契約業績は右肩上がりに推移し、グループ全体の新契約業績にも貢献しております。
 生命保険会社にとって、お客様にご契約いただくことはゴールではなくスタートであり、そこから長いお付き合いが始まります。最も大事なことは「長期にわたって会社が健全な状態で存続し、お客様に確実に保障を提供し続けること」です。したがって私の役割は、目先の業績等にとらわれず、長期的な視点でお客様のベネフィットや、会社の健全な成長につながる経営を実行することだと考えております。

変化する事業環境に耐えうるDNAを引き継ぐ

 「朝日生命の強みは何でしょう」と問われたら、私は「2度の経営危機を乗り越えてきた経験」と答えます。事業領域の見直しや財務体質の改善等に取り組んできた結果、2022年度には当社格付けが21年ぶりにA格に復帰いたしました。
 逆説的かもしれませんが、こうした困難を従業員が一丸となって乗り越えた経験こそが、会社のレジリエンス(困難や脅威を柔軟に乗り越え回復する力)を高めてくれたと考えています。事業環境がめまぐるしく変化するなか、経営に求められるのは変化に耐えうる柔軟性です。財務の正常化が進み、新たな成長軌道に乗る今、当時のような危機意識は薄れがちですが、若い世代の従業員にこうした変化に対応するDNAを引き継いでいくことも、課題の一つです。
 加えて、危機を乗り越えた経験を踏まえ、経営者として固く決意するのは、課題を先送りしないこと。社会や市場の変化に即した、スピーディーな経営判断を心がけてまいります。
 また、柔軟な経営判断の一助となるのは、「従業員との密なコミュニケーション」ではないかと、自身の経験からも実感しております。なないろ生命の社長時代には、自ら積極的に従業員とコミュニケーションを取ることで、社内で起きていることをタイムリーに把握し、課題の認識と素早い判断につなげたことが奏功したと思っています。

「マルチチャネル戦略」でグループとしての成長を目指す

 2021〜2023年度の前中期経営計画「Advance 〜 The road to 2030 ~」で は、 コロナ禍や物価上昇等、厳しい事業環境のなか、2021年に開業した子会社の「なないろ生命」の成長も寄与し、朝日生命グループの「お客様数」「保障性商品の新契約年換算保険料」「保障性商品の保有契約年換算保険料」の経営戦略目標を達成することができました。
 これからの事業環境を見ると、2030年まで国内では、少子高齢化と生産年齢人口の減少が進行しながらも、団塊ジュニア世代の流入で、当社のメインターゲットであるシニア層のお客様は一定のボリュームを維持する見通しですが、2030年以降はシニア層を含む人口減少が想定されます。テクノロジーでは、AI・デジタル技術の進化が、生命保険事業に変革をもたらす可能性があり、一方の海外、特にアジアでは人口増加・経済成長によるマーケット拡大が想定される状況です。
 こうした事業環境認識の下で策定しました、2024〜2026年度の新中期経営計画「ネクストA -『2030 年のありたい姿』の実現に向けて-」では、戦略の柱の一つとして「お客様一人ひとりに最適な商品・サービスの提供」を掲げています。朝日生命の「営業職員チャネル」と、なないろ生命の「代理店チャネル」等で取り組むマルチチャネル戦略の推進により、さまざまなお客様のニーズに沿った商品やサービスの実現を目指します。
 ライフスタイルが多様化するなか、それぞれのお客様の志向にフィットする経路で最適な商品・サービスを提供することが求められています。グループのメインチャネルとなる営業職員チャネルでは現在の保有契約を継続していただけるよう着実に、そしてなないろ生命は新規契約のお客様を増やす成長ドライバーとして、この2つのチャネルを軸に、グループ全体での成長を目指します。
 まだまだ、国内マーケットにおいてチャレンジすべきテーマは多々あると考えていますが、一方で、少子高齢化は、生命保険業界にとって国内マーケットの縮小を意味します。これを踏まえ、当社は2017年よりベトナムの現地保険会社と提携し、テレマーケティングによる保険販売ノウハウの提供や、インターネットを活用したビジネスモデルにかかるコンサルティング事業を展開してきました。2023年3月にはホーチミンに現地法人「朝日ライフコンサルティング・ベトナム」を設立し、現在展開しているコンサルティングビジネスの業容拡大を図るとともに、新たな事業展開と収益化を進めていきます。

「営業職員チャネル」は付加価値の再認識を

 急成長したなないろ生命は、今後の3年で足下をきっちりと固め、次の成長ステージに向けて準備する段階であると位置付けています。一方で、現在でも生命保険加入経路の約半分を占める営業職員チャネルがグループの大黒柱であることは変わりません。営業職員チャネルの課題は、同チャネルの存在意義や付加価値をより明確にして、将来も持続可能なビジネスモデルにブラッシュアップしていくことです。それには、「時代に合わせて変化すべきこと」と「変えてはいけないチャネルの強み」との見極めが大切です。
 営業職員チャネルにおいて、お客様とフェイストゥフェイスで行う丁寧なコンサルティングや真摯なアフターサービスは、まさに変えてはいけない強みです。
 「保険商品を選ぶときは、担当者から詳しい説明を聞いて契約したい」「分からないことがあるとき、気軽に相談したい」「何かあったときに連絡したら、すぐに対応してほしい」といった声は、今も多くのお客様から寄せられています。こうした声は、時代が変わってもなくならないニーズです。
 業務の効率化やお客様の利便性につながることはデジタル化等により常に進化させる一方で、お客様から期待されているコンサルティングやサービスについては、しっかりと維持・強化していきます。

お客様との対話のなかに「答え」がある

 超高齢化が進む日本において、当社は医療保険、がん保険、介護保険等、「生きるための保障」を提供する第三分野のマーケットにいち早く着目し、商品・サービスの開発に取り組んでまいりました。特に「あんしん介護」シリーズをはじめとした介護・認知症保険の分野では、保障の充実や独自性という点で、お客様にも高い評価をいただいております。こうした日本の社会的な課題に寄り添った商品やサービスの開発・提供には今後も注力してまいります。
 「マチュア(成熟市場)であり、新しい領域や新商品をつくり出すのは難しい」と言われて久しい生命保険業界ですが、お客様の価値観やライフスタイルによって、求められる保障は刻々と変化していきます。多様化するニーズについて、私は「お客様との対話のなかに常に答えがある」と感じています。お客様の声を聞き、商品やサービスの改善を図っていくのはもちろんですが、重要なことはその背景にある潜在的なニーズを、生命保険会社としていかにくみ取っていくか。そこにお客様の期待を上回るサービスや新しいアイデアの種が埋もれているのではないかと思っています。

仕事を通じて「成長が実感できる」職場に

 前中期経営計画から継続するDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略は、営業職員のプレゼンテーションを補助する端末「スマートアイⅡ」や社内プラットフォームの活用を通じて、引き続き、お客様の利便性向上と従業員の業務効率化を進めてまいります。
 「人的資本経営」については、DX戦略と並ぶ重点分野として位置付けています。当社の従業員の構造は、少子高齢化と人口減少が進む日本の人口構造とほぼ同じになっています。企業としての活力を維持するためにも、新卒採用のほか、キャリア採用、シニアの活躍などを推進していくとともに、従業員一人ひとりの力を高めるための成長支援や、個を活かすための組織づくりも重要です。従業員のエンゲージメントをさらに向上させるには、ワークライフバランスはもちろん、「仕事を通じて自身が成長できている」という感覚や、「自分の仕事が社会のために役立っている」という実感なども非常に大切な要素です。
 「働きやすさ」と「働きがい」の両方を満たせるよう、自律的にキャリアの目標設定ができ、いきいきと働ける職場環境や、挑戦することに臆さない企業風土をつくることを目指していきます。
 

本業と社会課題の解決を一体のものとして取り組む

 当社が目指す「2030年のありたい姿」は、前中期経営計画から引き継いだ「人生100年時代を迎え、生命保険事業を通じて、社会の課題解決に貢献する会社、お客様の“生きる”を支え続ける会社」です。
 これまでも本業を通じて、社会課題の解決に取り組んでまいりましたが、今後はさらに一歩踏み込んだ本業とサステナビリティ経営の融合を目指します。例えば、当社が注力する介護・認知症分野では、単に優れた保険商品を提供するだけでなく介護問題のソリューション提供までを視野に入れたいと考えています。
 自社の取組みだけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資への意識が高まるなか、当社もESGを考慮した責任投資を進めてまいりました。サステナビリティの取組みは、企業価値や株価のパフォーマンスとリンクしているという認識は、今や世界で共通のものとなっています。当社もエンゲージメント(対話)などを通じて、投融資先企業とのコミュニケーションを図っていく所存です。
 こうした事業とサステナビリティを一体のものとして取り組むことで、新中期経営計画の経営戦略目標の達成を目指してまいります。

「お客様視点」で考えることを徹底していく

 「アウトサイダー(第三者)の眼とインサイダー(当事者)のパワーを兼備した者こそが、組織内で変革を成功させる希少なリーダーとなりうる」——リーダーシップ論の権威、米ハーバードビジネススクールのジョン・コッター名誉教授による言葉です。組織変革論を学んだ時期にこの言葉を知って以来ずっと、「座右の銘」としています。
私は一般企業に出向していた時期があるのですが、当時たまたま職域で保険の勧誘を受ける機会がありました。「保険会社の従業員」という立場からいったん離れ、外部からの視点で眺めてみると、それまで当たり前だと思っていた営業スタイルの課題がはっきりと見えてきたのです。
 一方で、代理店チャネルに特化したなないろ生命の社長を経験したことで、一社専属の対面チャネルである営業職員チャネルのコンサルティングやアフターサービスの付加価値に改めて気付きました。
 どちらも、朝日生命の外にいたからこそ、客観的に認識できたことです。これまでのキャリアで得たアウトサイダーの視点と、積み上げてきたインサイダーとしての推進力、この両方を経営に活かしてまいります。
 経営者としての私の使命は、よりよい商品やサービスの提供を通じて、お客様の期待にお応えすること。そして、当社の存在意義や企業価値を高め、健全に事業継続させていくことです。そのためには忌憚のないご意見をお客様から頂戴して、その背景に潜むお客様のニーズをしっかりと考え続けることが重要です。ステークホルダーの皆さまには、今後とも変わらぬご支援・ご愛顧を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
 
代表取締役社長