第56回定時総代会質疑応答の要旨

I.事前質問

質問1
予定利率の引き下げを行うのですか。

回答(藤田社長)

当社は「逆ざや」を吸収したうえで、757億円の基礎利益を確保しております。従いまして、「予定利率の引き下げ」につきましては、当社には全く必要ないため、その実施は考えておりません。
質問2
内勤職員を大幅に削減されましたが、企業にとって「人」は大きな財産でもあり、この点、経営者としての責任については、どのようにお考えですか。

回答(藤田社長)

平成15年度始に内勤職員4,000名体制とする過程で、多くの内勤職員が退職することとなり、会社の再生のためとはいえ、経営を預かる者として大変心苦しく、遺憾に存じております。
ただし、一方で、直面する当社諸課題に対しましては、「朝日生命プロジェクトR」の総仕上げと「サクセスA」の推進・早期定着によりまして、一日も早く「お客様満足度」と「収益性」を高め、「お客様に最も信頼される生命保険会社」となっていくことが、われわれ経営陣に課せられた最大の使命・責任であると思っております。
「朝日生命プロジェクトR」が、従業員に対して大きな痛みを伴ったリストラクチャリングであったことは事実ですが、自力での再生という全役職員の共通認識の下に、全社一丸となった取組みをしてきましたことにより、幸いにも、主要項目については計画より一年前倒しで完了する運びとなり、成果もあがりつつあります。
加えて、経営陣におきましても、昨年4月より、従来の取締役数を半分以下にしぼると同時に、執行役員制度を導入し、取締役会の活性化と役員の執行責任の明確化を図ったこと、役員報酬の削減、役員賞与は零、役員退任慰労金の支給見送り等、制度運営や処遇面でも、相応の対応を行ってきているところです。
今後とも、直面する2大経営改革「朝日生命プロジェクトR」、「サクセスA」の遂行に全力を上げて取り組むことにより、「お客様の負託」にお応えし、また、従業員にも報いていけるよう努めてまいりたいと考えております。
質問3
最近、インターネット等でも朝日生命のことが色々と取りざたされておりますが、本当に今後も単独で生き残っていかれるお考えですか。

回答(藤田社長)

ご質問の趣旨は、提携や合併等を考えていないのか、ということかと思いますが、当社は、現在、「朝日生命プロジェクトR」による経営インフラのリストラクチャリングとコスト削減、そして「サクセスA」による収益力の強化に注力して、抜本的な経営改革を進めています。
当面はこれらの経営改革に注力し、いかなる状況変化にも耐え得る収益力・財務体質を作り上げることにより、自力再生を果たしていくことを最優先すべきであると考えております。「プロジェクトR」はほぼ達成できており、「サクセスA」を実施・成功できれば、自らの足で立ち、自らの力で前進できる会社に十分なりうると考えております。
意見4
格付向上対策も重要かと思います。

回答(藤田社長)

当社といたしましても、ご意見のとおり、格付向上対策は重要と考えております。これに向けた取り組みとしては、財務体質の改善および収益力の強化を図ることが何よりもポイントであると考えており、これらを経営戦略に反映させております。
具体的には、「朝日生命プロジェクトR」と「サクセスA」による取り組みがそれです。この2大改革を着実に実現し、その成果を数値面できちんと示していくことが、格付向上に繋がるものと考えております。
今後も、引き続き、お客様や社会から高い評価をいただける会社となるよう、経営努力を重ねてまいる所存です。
質問5
事業報告書では、損害保険も積極的に取扱うとのことですが、それはミレアホールディングスの商品を指すのでしょうか。
質問6
ミレアとの経営統合を見送った背景が説明されていますが、そのことと、今後もミレアグループの商品を取り扱うこととの関連を説明願います。(それでもミレアグループと提携しなければならないのでしょうか。)

回答(藤田社長)

損保商品は、現在、ミレアホールディングス傘下の東京海上・日動火災の商品を取り扱っております。
ミレアとの経営統合は確かに見送りましたが、ミレアホールディングスグループ各社とは、今後とも友好な関係を引き続き維持しつつ、双方にメリットのある提携・協力関係は継続・促進することとしております。
また、当社は「サクセスA」にもとづきまして、個人保険マーケットに特化した生保会社として、個人のお客様に、死亡保障、医療・介護保障、損害保険など、すべてのニーズに対応する保険商品をお届けする所存であり、この実現のためには、損保商品を当社で取扱うことは不可欠であると考えております。
さらに、当社は総代理として、損保商品を販売しておりますので、損保商品を販売した場合には、当然ながら当社の収益になってまいります。
ミレアとの経営統合を見送ったにもかかわらず、ミレアの商品を扱うのは何故かとのご質問をいただいておりますが、当社としては、第一に、ミレアホールディングスグループ各社と双方にメリットのある提携・協力関係は継続・促進すること、第二に、当社の経営戦略である「サクセスA」を実現し、収益力を強化していくという観点から、どこの損保商品をラインアップすればよいかと考えた場合に、商品競争力があり、お客様サービスも充実している東京海上・日動火災という優良損保会社を選択し、その商品を取り扱っているということですので、ご理解をいただきたいと思います。
質問7
長期金利の異常な低金利が続く中で、資産運用が国内債券に偏り過ぎではないかと思いますが、将来の金利リスクに対する考え方や、リスクヘッジなどの対応策について説明してください。

回答(土岐取締役常務執行役員)

生保の特質として、負債サイドは、責任準備金が大層を占めており、それはほとんど円金利の負債です。一方、資産サイドは、国内債券あるいは国内貸付といった円金利資産を中心にして運用している、これが一般的な特徴です。
当社は、一般勘定資産に対する国内債券の保有割合が31.2%です。これに対して当社以外の主要生保9社の平均保有割合は35.0%となっており、外資系生保等はさらに高くなっています。各社の保有割合という視点から見たリスクでは、当社は相対的に低いのではないかと考えております。
当社では金利変動に伴う含み損益の増減が財務会計に及ぼす影響を抑制するため、保有国債を保有目的区分に分けて管理しております。満期保有債券と責任準備金対応債券、これが二分の一強を占めるわけですが、これらの区分の保有債券は、含み損益の増減がバランスシート上、直接影響を及ぼさないようになっております。そうした保有目的区分に応じた組み入れを行っているわけです。
また、当社では為替ヘッジを行い、リスクを最大限抑制した外債投資などを相当額実行しております。国債一辺倒ということでなく、円金利資産の代替として、運用対象の分散を図りながら収益の確保に努めているところです。
さらに、金利上昇局面という判断に至りましたら、先物とかオプションなどのデリバティブを機動的に活用してヘッジを行いながら入れ替えを行い、運用利回りを引き上げていくというスタンスで臨んでおります。
意見8
自分の身の周りの人が勤める保険会社を見ていると、事務職員、契約社員等も新商品が発売されると、必ず加入させられたり、家族を含めてお客様の紹介をしているようです。全国の事務職員の一人一件でも膨大な件数になります。社員全体が生き残りを賭けていると感じる会社に成長して欲しいです。

回答(藤田社長)

当社におきましても、内勤職員による募集については、全社一丸となった営業体制による業績伸展を目的として、平成2年から継続して取り組んでおります。最近では、平成13年の「保険王」発売を契機に、各職場に職員募集運動推進責任者と推進リーダーを任命しまして、職員募集運動、また職員見込客紹介運動を展開しております。
これは、営業部門だけでなく、本社部門を含めた全役職員が実際に縁故・知人からの募集、あるいは営業部門へ縁故・知人の紹介を行って、会社業績への貢献に向けて取り組んでいるものです。また、内勤職員自身の契約についても、この取り組みの一環として、加入促進を図っております。
いただきましたご意見は、この難局を全社一丸となって乗り越えてもらいたい、というご趣旨であると受け止めております。私ども役職員一同、まさに一丸となって、その姿勢を、皆様をはじめとするご契約者の方々に認めていただけるよう、さらに一層努力してまいります。
質問9
テレビCMが、少しおとなし過ぎる気がします。人気の高い女優や俳優ばかりが良い時代ではないように思います。テレビのCMは、もう少し明るい、何となく目が行く、頭の中に入って残っている、そんな感じが(消費者に)受けるのではないでしょうか。

回答(三枝常務執行役員)

この4月から5月にかけまして、皆様にご覧いただきましたCMは、新商品「保険王カイゴとイリョウ」の新発売と商品名・商品内容を皆様にお知らせするとともに、当社に対し、「安心感」、「信頼感」、「明るいイメージ」をもっていただけるよう作成したものです。
タレントを使用いたしますと印象度が30ポイント高まるという調査結果が出ており、短時間で強い印象をお持ちいただくために、タレントを使用することがよかろうということで、今年度は、菅野美穂さん、竹野内豊さんを採用したものです。なお、この2人につきましては、販売促進用のグッズ、あるいはパンフレット・ポスターといった形での有効活用も図っておりますので、引き続き使用していきたいと考えております。ご提案いただきましたように、今後とも「質の高い」、「明るい」、「皆様の記憶に残る」よいCMを作るよう努力してまいります。

II.議場での質問

質問10
朝日生命は、りそな銀行と同じ新日本監査法人が担当だと聞きましたが、繰延税金資産の計上について、監査法人ともめたことはなかったのですか。
また、週刊誌等で金額が過大ということを問題視しているところもあるようですが、そういうことはないですか。

回答(山田取締役常務執行役員)

当社の監査法人はお話のあったとおり新日本監査法人ですが、繰延税金資産の計上に関して、もめたということはありませんでした。
当社の繰延税金資産の計上にあたりましては、今後5年間の課税所得を、課税所得と申しますのは言い換えますと今後、私どもが将来に亘って計上できるであろう収益のことですが、これを極めて厳正に、一部当社の計画よりも保守的な見方をして計上しております。また、今後5年間での回収可能性ということですが、それについても、厳正な見積もりを行っているものです。課税所得の見積もり、将来の回収の可能性、さらに最終的に貸借対照表に計上した金額、これらにつきましては新日本監査法人の承認を得て計上しているものです。
当社は、平成13年度・14年度の2年間におきまして、簿価ベースで約1兆円の株式残高圧縮を行っております。この過程で、多額の売却損・評価損を計上しており、これにより税務上の繰越欠損金が多額になっています。
通常、繰延税金資産と申しますのは、会計上の収益費用と税務上の損金益金の差額、これを会計上調整するというものでありまして、将来的に必ずそれらが回収できるんだと、戻ってくるんだという見込みがたつものを計上することができます。ただし、一方で、税務上の繰越欠損金も、将来の法人税を減額するという効果がありますので、これも繰延税金資産に計上することになっています。従いまして、当社は非常に多額の株式の売却損・評価損を計上したがために、繰延税金資産がやや多く見えるということだろうと思います。なお、当社の基礎利益は14年度の決算で年間757億円ありますので、基礎的な収益力や、税負担能力というものは十分にあると判断いたしております。
また、もう一つ付け加えれば、生命保険事業は、非常に長期にわたる契約から収入される保険料をベースにして収益が計上されますので、他業態と比べ、比較的、収益構造は安定しているといえると思います。これらの点を踏まえて、新日本監査法人から承認を得た金額を計上しているものです。
質問11
少子高齢化ですので、介護・医療の第三分野の商品を強化するということですが、実績や今後の見通しについて教えてください。
目玉商品でやられることに期待しています。是非役員の皆さんも一心同体で、次回の総代会では「このような良い成績になった」ということを胸を張ってお答えいただけますように、期待をしたいと思います。

回答(佐藤執行役員)

サクセスAにもとづき、今年度から特に50歳以上の方を対象とした新商品「保険王カイゴとイリョウ」を発売しました。
「保険カイゴとイリョウ」は、件数でいいますと、6月までに既に約28,500件販売しております。年度計画では、年間15万件の販売目標をたてておりますけれども、これについては十分達成できるものと考えています。また、「保険王カイゴとイリョウ」発売後、営業職員の一人当たりの売上の生産性は、前年比23%増と非常に高い伸展を示しております。
この第三分野を含め、従来の第一分野、それから損保とあわせて、総合的な保障を提供していきたいと考えています。

藤田社長の関連説明

保険商品戦略は、人口動態の分布が重要な要素となります。今、日本の人口構成上、一番人口が多いのは50代半ばのいわゆる団塊の世代であり、ここに人口の山があります。それが、40代になると少し減り、30代の前半のところにまた人口のコブがあります。これがいわゆる団塊ジュニアです。生命保険事業には、このコブのあるところの30代と50代の2つの大きなマーケットがあるわけです。
30代は保障中核層、世帯を構成している層です。自在性が十分にある「保険王」は、特にここを対象にしており、これが第一の柱です。
もうひとつは50代の方々ですが、この方々は、死亡保障中心の商品ニーズもさることながら、いわば自分のための保障がほしいという層です。疾病・傷害・介護、つまり自分が死亡して家族のためというのでなく、自分自身が長生きして、あるいは自分自身の健康のために、そういうニーズならばあるというマーケットです。ここに対しての商品戦略が「保険王カイゴとイリョウ」です。こういう商品戦略を、人口動態の分布からくるところに照準を合わせてやっている訳です。
先ほど来、ご指摘いただきましたとおり、全役職員が一丸となり、両方の商品を、一所懸命販売し、出来る限り、「高い伸び率を示せました。」ということを、ご披露させていただくように努めてまいります。
質問12
逆ざやがやや大きいように思いますが、逆ざやへの対策の実効性を教えてください。

回答(藤田社長)

逆ざやを一朝一夕で解消するということは困難な問題ですが、第一にやるべきことは保険本業の収益を高めていくことであると思っています。例えば、新規契約のより一層の増産、契約の継続率の向上、あるいはさらなるコスト削減、こうした保険本業の収益強化を図っていくということが第一であると考えております。
第二は、資産運用面で、さらなる利回りの向上を図るということです。保険会社の負債・資産の特性を踏まえて、適切な資金配分を行うことにより、少しでも高い運用利回りを獲得していく、これが二つ目に必要なことだと思っています。
先ほど来、申し上げておりますとおり、平成14年度、当社は、逆ざやを吸収した上で、保険本業の利益であります基礎利益が757億円ありました。
この基礎利益を出来るだけ多く計上していくということが極めて大切なことであり、基礎利益をより高めていくということが、会社トータルとしての逆ざや対策となると考えております。「サクセスA」の基本的なねらいもそこにあります。この計画では、平成17年度に基礎利益900億円以上を目指すということにしており、その数字が間違いなく達成できるように、引き続き鋭意努力をしてまいる所存です。
質問13
少子高齢化は人口の減少につながります。また、外資系保険会社の看板が最近目につきますが、朝日生命では、保険における海外進出・市場開拓をどうお考えですか。

回答(藤田社長)

アメリカ・ヨーロッパは、既に保険においてはもう相当の先進国でありますので、仮に進出する地域としては、多分アジアなのだろうということが、一般的に言われています。一時期、数年前ですが、投資の分野のグローバル化等をいろいろ進めておりました時は、例えばタイのある生保と業務提携したりとか、あるいは中国の深せんに事務所を出して将来提携を進めていこうとか、そういった戦略を持っていた時期が当社にもありました。しかし、今回、「朝日生命プロジェクトR」を作り、相当大幅なリストラクチャリングに取り組んでいる時であり、また投資分野における海外戦略も、ほとんど一時的に撤退をするということで、ロンドン・ニューヨークその他いろんなところにいた投資部門の人間も、全部、本国に戻しております。
将来的に、当社が現在の計画を全て達成でき、体力が相当についてきた時は、アジアにおける生保と提携するなどということもあり得るかもしれません。しかしながら、当面は、2大改革「朝日生命プロジェクトR」、「サクセスA」で、リテールに特化した分野を何としても完成させるということに全力を挙げて取り組んでおりますので、現在のところ、海外で保険事業を展開するというプランは、具体的に持ち合わせておりません。
質問14
来年度は、社員配当を払える見通しですか。

回答(藤田社長)

生命保険会社の場合には保険業法55条という規定があり、つまり配当可能利益がこういう状態である場合は配当していいですよ、というそういう規定がありまして、平成14年度、当社の次期繰越剰余金は約400億円ありますが、時価会計のもとで2,000億円の含み損をかかえたことで、保険業法55条の規定上、配当可能利益がマイナスになり、遺憾ながら、配当金のお支払いができないことになりました。
しかしながら、今年度は「サクセスA」を着々と進めることにより、所定の基礎利益は当然確保してまいりますので、次期繰越剰余等において、その財源を確保することは十分可能であると思っています。
株式の相場如何で、今年度と同じように含み損が多大になれば、同じような状況になるという可能性も全くないわけではありませんが、当社は、引き続き株式の残高圧縮、リスク性資産の圧縮等に努めており、株式の含み損を解消するべく努力しております。来年3月末の相場は当然わからないことであり、今ここで確約したことは申し上げられませんが、資産のポートフォリオの見直しを鋭意進め、配当できるように精一杯努力してまいろうと思っております。
以上