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入院・手術費用が払えないときは?利用できる制度や対処法について解説

「病気で手術を受けなければならないが、費用が払えない…」このような場合に、手術費用を払う方法はあるのでしょうか。
この記事では、手術費用が払えない時の対処法について解説します。

※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。

入院費用の内訳と目安

ケガや病気による手術で入院が必要になった際には、どの程度の費用がかかるのでしょうか。入院費用は、公的医療保険が適用される費用と、自己負担が必要となる費用に分かれます。以下で、入院費用の内訳とかかる費用や日数の目安について見ていきましょう。

公的医療保険が適用される入院費用の内訳

公的医療保険が適用される入院費用には、治療費や入院基本料などがあります。ケガや病気の治療に必要となる治療費の自己負担額は、1割から3割です。小学生未満と70歳以上75歳未満の方は2割(現役並みの所得の方は3割)、75歳以上で一般的な所得の方は1割(2022年10月以降は2割)、現役並みの所得の方は75歳以上でも3割の負担となります。
入院基本料とは、入院1日につき発生する費用のことです。その中には、医師による診察料や病室の使用料などが含まれます。

自己負担が必要となる入院費用の内訳

その他の入院にかかる費用は自己負担となります。 その他の費用として、

  • 個室や少人数の部屋を希望する際の差額ベッド代
  • 食事代の自己負担分(一般:460円/1食あたり)
  • テレビカード、飲料、リネン類のレンタル料
  • 先進医療による技術料

などが挙げられます。入院日数が長くなるほど、食費や生活費は大きくなるので注意が必要です。

入院時の費用と日数の平均

公益財団法人 生命保険文化センターによると、1日の入院費用の平均は23,300円とあります。この金額は、高額療養費などの制度を利用した後の自己負担額になります。最も割合が多いのは、10,000円以上15,000円未満です。1万円から2万円台が入院費用の目安と言えるでしょう。

参照:公益財団法人 生命保険文化センター
1日あたりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1210.html

また、別の調査によると、入院の平均日数は15.7日とあります。1日の平均入院費用の23,300円に入院の平均日数である15.7日をかけると、入院時の平均費用は約36.5万円と算出されます。

参照:公益財団法人 生命保険文化センター
令和元年度 生活保障に関する調査
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r1/r1hosho.pdf

手術費用や入院費用に利用できる公的制度

手術費用や入院費用の負担軽減に役立つ公的制度について、以下で解説します。手術費用の支払いにお困りの方はぜひ参考にしてください。

高額療養費制度

高額療養費制度は、月(1日から月末まで)の限度額を超える医療費を支払った場合に、超えた分は公的医療保険制度が負担してくれる制度です。限度額は収入や年齢によって異なります。入院などをする場合は、健康保険限度額適用認定証を提出することで、退院時に高額療養費の最終的な自己負担分のみ支払えば済む仕組みになっています。通院治療などで高額療養費の申請を行う場合は、申請後3~4ヶ月程度で自己負担を超えた分の医療費が払い戻されます。

高額療養費貸付制度

高額療養費貸付制度は、高額療養費が支給されるまでの間に無利子でお金が借りられる制度です。高額の医療費の支払いが必要となった場合に、その費用に充てられます。ただし、貸付が受けられるのは払い戻される金額の8割相当までです。

健康保険限度額適用認定証

健康保険限度額適用認定証の交付を受ければ、医療機関ごとに1か月の支払額が自己負担限度額までで済みます。限度額適用認定証を取得していれば、自己負担分を除く高額療養費の立て替えをしなくて済みます。入院が決まった時などは、入院前に健康保険や健康保険組合、国民健康保険、共済組合から限度額適用認定証の交付を受け、病院の窓口で提示する必要があります。入院前に間に合わなくても、入院中の提示で、立て替えをせずに済むケースもあります。

医療費控除

医療費控除は年間10万円、あるいは所得の5%を超える医療費を支払った際に、所得税と住民税で控除が受けられる制度です。対象となる費用には、治療費や入院費の他に、薬代、公共交通機関の交通費なども含まれます。医療費控除を受けるためには確定申告が必要で、自動的に所得税が控除されるわけではないので注意が必要です。所得税で確定申告を行えば、自動的に住民税にも医療費控除が適用されます。

一部負担金減免制度

お住まいの市区町村、あるいは後期高齢者医療制度によっては、一部負担金減免制度を利用できる自治体もあります。急激な収入減や災害による生活困難状態、あるいは長期入院などの特別な事由により医療費の自己負担分(一部負担金)の支払いが困難と認められた場合、医療費の一部負担金が減免される制度です。状況に応じて、免除・減額・徴収猶予のいずれかが適用されます。

傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガの治療で仕事を休んだことで収入が途絶えた場合に、加入している健康保険や健康保険組合、共済組合から支給されます。会社員や公務員の方で、入院や手術によって働けない期間が長くなる場合には、利用できる可能性が高いでしょう。

傷病金手当金の支給を受けるためのおもな条件について、以下に記載します。

  • 業務外の病気やケガによる療養で労務不能である
    (在宅療養であっても、医師の指示によるものであれば対象になる)
  • 連続した3日間仕事を休み、4日目以降である
  • 休業期間中に給与の支払いがない
    (一部だけ給与が支払われている場合は、その金額を傷病手当金から差し引いて支給)

また、傷病手当金の一日当たりの金額は給与の全額ではなく「支給日より前の継続した12ヶ月の給与の各標準報酬月額を平均した額÷30日✕2/3」となります。

無料低額診療事業

無料低額診療事業とは、経済的な理由で必要な医療を受けることができない人に対して、無料または低額で診療を行う事業です。 全国に約700ヶ所ほど設けられています。

付加給付制度

健康保険組合や共済組合によっては、月の医療費が一定の金額を超えた場合に払い戻しを行う独自の付加給付制度が用意されていることもあります。一部負担金払戻金や療養費付加金など、健康保険組合や共済組合によって名称が異なる場合もありますので、ご自身の加入している健康保険組合や共済組合の制度をよく確認してみましょう。

生活保護制度

生活保護を受けている人は、医療扶助を利用できます。生活保護者は公的医療保険制度から抜けるため、医療扶助では自治体が10割分の医療費を支給してくれます、そのため医療扶助の対象になっている方は、医療機関を受診しても自己負担はありません。これは通院した場合だけでなく、入院した場合も同様です。医療扶助では、入院時の食事代も無料になります。

病院を退院する際に手術費用が払えないときの対処法

公的制度を利用しても、退院する際に手術費用が払えないこともあるでしょう。以下でそのような状況に陥った場合の対処法について解説します。

病院に分割払いや費用の軽減などの相談をする

どうしても手術費用が払えない場合には、事前に病院に支払いに関する相談をしましょう。多くの病院には費用に関する相談窓口が設置されています。病院によって異なりますが、

  • 手術費用や入院費用の分割払い
  • 支払期日の延長
  • 費用の軽減に関するアドバイス

といった対応を取ってもらえる場合もあります。支払いが難しい場合には退院時にいきなり伝えるのではなく、病院側に前もって相談することが大切です。

民間企業や銀行の医療ローンを組む

信販会社や銀行では、医療ローンのサービスを提供しています。病院と提携している金融機関もあり、公的医療保険の適用外の支払いにも利用可能です。

ただし、医療ローンは公的な制度と異なり、利息が発生するため注意が必要です。

医療保険に加入して手術費用の不安を解消しよう

突然のケガや病気によって手術が必要になった場合でも、医療保険に加入していれば、お金の心配が軽減されます。病気やケガのリスクに備える医療保険への加入をぜひ検討してみてください。

監修者

ファイナンシャルプランナー(CFP)
FP技能士1級 畠中雅子

新聞、雑誌、Web媒体などに多数の連載、レギュラー執筆を持つ。

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