保険を学ぶ

生命保険の必要性が高い人・低い人とは?いらないとされる理由と加入するメリットも解説

生命保険の必要性をあまり感じず、加入を決断できないという方もいるでしょう。そこでこの記事では、生命保険の必要性が高い人と低い人についてそれぞれ解説します。生命保険の必要性を理解するためには、まず基礎知識について理解することが大切です。その上で、生命保険がいらないと言われる理由と入るべき理由について知ることで、自分に生命保険が必要か判断できます。

※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。

生命保険の基礎知識について

まず、生命保険の仕組みや加入の割合といった基礎知識について解説します。

生命保険とは相互扶助の精神で成り立つ制度

生命保険とは、多くの保険の契約者が保険料を出し合って保険金の原資となるお金を積立て、「もしも」の場合に保険金や給付金を支払って経済的に支え合う、相互扶助の精神で成り立つ制度です。

もしもの場合とは、おもに病気・ケガ・死亡あるいは長寿などのリスクを指します。生命保険は保険加入者だけでなく、その家族も支える制度と言えるでしょう。生命保険には、死亡保険・医療保険・がん保険・就業不能保険、個人年金保険などさまざまな種類があります。

日本人の89.3%が生命保険に加入

公益財団法人 生命保険文化センターの「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」によると、日本人の89.3%が生命保険に加入しているとあります。このデータからは、将来のリスクに備える生命保険に、多くの日本人が加入していることがわかるでしょう。

参照:公益財団法人 生命保険文化センター
令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」(令和3年12月発行)
https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html

「生命保険はいらない」と言われる理由

日本人の89.3%以上が加入している生命保険。一方で、生命保険への加入は必要ないという意見もあります。以下で、生命保険が不要と言われる理由について解説します。

国民皆保険制度や高額療養費制度がある

国民皆保険制度があることで医療費の負担が抑えられることが、生命保険がいらないと言われる理由の1つです。

日本には、すべての国民が公的医療保険に加入する国民皆保険制度があります。これにより、病気やケガで治療の必要が発生した場合でも、1割から3割の自己負担で医療機関を受診できたり、投薬を受けられたりするのです。
注意すべきなのは、1割から3割であっても自己負担が発生するという点です。手術や入院が必要になれば、医療費の自己負担額は大きな金額になる可能性があります。

また、がん・心疾患・脳血管疾患といった重大な病気にかかり多額の治療費が発生したとしても、自己負担の限度額以上は健康保険制度が負担してくれます。これは、高額療養費制度といって、所得や年齢によって医療費負担の限度額が決まっており、入院した場合でも限度額を超えた医療費は退院時に支払う必要がありません。また、通院などでひと月の医療費が高額になった場合には、払い戻しを受けることも可能です。

ただし、高額療養費制度があるとしても、高額療養費を除いてもなお、1日の入院には平均で2万3300円かかるという調査があります。1日2万円以上の自己負担が発生することは、知っておいた方がよいでしょう。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター
「令和元年度生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/research/chousa/1320.html

生命保険の保険料負担がある

生命保険の中には、貯蓄型と呼ばれる商品もあります。生命保険で貯蓄することについては、疑問を呈する意見や、保険料負担は他の運用に回した方がよいという考え方もあります。

生命保険はもしもの場合に備えて、保険料を支払い保障を受ける制度です。そのため、保障の内容にもよりますが、毎月一定額の保険料負担が発生します。その費用を保険料に充てるのではなく、株式などの投資に回して利益を得る方が有利と考える方もいます。しかし、投資は必ずしも利益が得られるわけではなく、損失が発生している場合には、必要なお金を用意することができない可能性があります。

貯蓄があれば治療費が賄える

貯蓄があれば、生命保険に加入していなくても治療費を賄うことが可能です。生命保険は、もしもの場合に経済的な負担をケアします。もしもの場合には病気やケガだけでなく死亡も含まれますので、家計を支える方が突然亡くなった場合でも不安のない貯蓄があれば、生命保険の必要性は低いでしょう。ただし、病気・ケガ・死亡に備えて、不足しないだけの貯蓄を常に確保しておかなければなりません。

生命保険に入るべき理由

生命保険はいらないと言われる理由は、一面を見れば納得できる部分があるかもしれません。しかし、見方を変えるとさまざまなリスクが浮き彫りになることも忘れてはいけません。生命保険に加入する、加入しないという二択ではなく、家計のバランスや貯蓄額を考えて必要な備えを行うことが重要です。以下で、生命保険に入るべき理由について解説します。生命保険への加入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

もしもの場合にすぐ保険金や給付金が受け取れる

生命保険に加入することで、突然のケガや病気で治療が必要になった場合に、保険金や給付金を受け取ることができます。保険金や給付金があれば、病院の費用や、家族の生活費を心配することなく治療に専念できます。さらに、がん・心疾患・脳血管疾患といった重大なリスクに対して手厚く備えたいという場合には、特約を付けることで保障に厚みを持たせたり、他の生命保険と組み合わせて保障内容を充実させられたりします。

死亡時に家族に費用が残せる

生命保険の一種である死亡保険に加入すれば、死亡時に家族にお金が残せます。残された家族はその後の生活設計を、保険金をベースにして立てることができるのです。また、書類が揃っていれば、数日から数週間で保険金が支払われるので、葬儀にかかる費用にも保険金を充てることが可能です。

税金の控除の対象となる

生命保険料の一部は、所得税や住民税の控除対象となります。控除額は年間払込保険料によって異なり、所得税で最大12万円、住民税で最大7万円です。もしもの場合に備えられるだけでなく、税金対策となることは、生命保険に加入するメリットと言えるでしょう。

生命保険の必要性が高い人・低い人

生命保険の加入には上記のようなメリットがありますが、必要性が高い人と低い人がいることは事実です。以下で、どのような人が生命保険の必要性が高いのか解説します。

生命保険の必要性が高い人

生命保険の必要性が高い人のざっくりとした特徴として、家族がいることや、現在、あるいは将来の貯蓄に不安を感じていることが挙げられます。

結婚をしている・扶養する家族がいる

結婚をしている方や扶養する家族がいる方は、生命保険に加入する必要性が高いと言えるでしょう。まず、病気やケガになった場合には、医療費の負担が発生します。入院が必要になれば、その負担が増えるだけでなく、働けない期間が発生することで収入も減少します。生命保険に加入していれば、保険金や給付金により医療費や収入源による負担の軽減が可能です。

また、死亡保険に加入することで、残された遺族に死亡保険金を残すこともできます。

貯蓄状況に不安がある

貯蓄状況に不安があり、病気やケガに対する備えが充分でない方も生命保険の必要性は高いでしょう。健康保険や高額療養費制度といった公的制度を利用しても、病気やケガの医療費は0にはなりません。また、入院が必要になれば、健康保険の対象外の差額ベッド代などもかかります。貯蓄に不安がある方は、医療保険・がん保険・就業不能保険などの生命保険への加入を検討しましょう。

老後資金を積み立てたい

老後資金を積み立てたいという方は、貯蓄型の生命保険を活用しましょう。死亡保障で死亡のリスクに備えながら、貯蓄が行えます。また、保障が不要になった際は、解約払戻金を受け取り、老後資金などに充てることも可能です。

また、老後に不安があるという場合には、個人年金保険への加入もおすすめです。個人年金保険に加入すれば、公的年金だけでは不足しがちな年金生活に、保険会社からの年金も受け取れ生活費を補えます。

相続税対策を考えている

相続税対策を考えている方も、生命保険を有効に活用することが可能です。生命保険による死亡時の保険金には、一定額の非課税枠が設けられています。死亡保障を得ることにより、相続税を抑えて遺族にお金が残せるわけです。保険金の非課税枠は、法定相続人の人数に500万円をかけた金額です。また、保険金はみなし相続財産にはなるものの、遺産分割協議の対象にならないので、受取人の固有財産にできます。

生命保険の必要性が低い人

生命保険の必要性が低い人の特徴について以下で解説します。

独身で扶養する家族がいない

独身で扶養する家族がいない方は、生命保険に加入して備える必要性は低いでしょう。万が一死亡した場合にも、遺族の生活を気にかける必要がないため、葬儀費用を残せれば大きな問題はありません。また、病気やケガにも生活や医療費がケアできる貯蓄があれば対処できます。

ただし、若い年齢で生命保険に加入すれば、保険料が安くなるというメリットがあることは覚えておきましょう。保障が一生涯続く終身型の生命保険に加入すれば、将来のリスクに対する大きな備えとなります。

もしもの場合に備えた貯蓄がある

扶養する家族がいる場合でも、ケガ・病気・死亡といったもしもの場合に備えて充分な貯蓄があれば生命保険の必要性は低いといえます。生命保険は、突発的なケガ・病気・死亡に対する経済的な負担を軽減してくれます。経済的な負担に対する不安がなければ、生命保険の必要性は必然的に低くなるでしょう。

もしもの場合に備えて生命保険に加入しよう

生命保険への加入は、貯蓄に不安がある方や扶養する家族がいる方にとって必要性が高くなりますし、誰にとってもケガ・病気・死亡のリスクは0ではありません。そのようなリスクに生命保険を活用して備えることは、安心して暮らすためにはとても重要です。自分だけでなく、家族のことも考えて生命保険への加入を検討することをおすすめします。

監修者

ファイナンシャルプランナー(CFP)
FP技能士1級 畠中雅子

新聞、雑誌、Web媒体などに多数の連載、レギュラー執筆を持つ。

記事一覧へ