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認知症保険を親にすすめる?加入のメリットと注意点

認知症に特化した保険として注目される認知症保険。もし自分の親が認知症になったら、どうすればいいのだろうと考えたことはありませんか?親に認知症保険への加入をすすめたいと考えている方へ、認知症保険に加入するメリットや注意点について解説します。

※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。

約5人に1人が認知症に?認知症のリスクと現状

まずは認知症についての基本情報をおさらいしましょう。認知症の症状や、認知症患者の現状と今後について解説します。

認知症とは?

認知症とは、脳の病気や障害といったさまざまな原因により脳の働きが少しずつ低下する症状です。脳の認知機能に障害が起きることで日常生活に支障が出る症状の総称として使われます。

関連記事:認知症のおもな4つの種類・特徴・割合について解説
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/types-of-dementia.html

認知症患者の現状と今後

認知症患者は今後増加していくことが予想されています。厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、国内の65歳以上の認知症患者数は、2020年時点で約631万人。2025年には、約730万人(高齢者の約5人に1人)まで認知症患者が増加すると予測されています。

参照:厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/23685

認知症の介護費用と家族への影響は?

親が認知症になった場合の介護費用や家族への影響について解説します。

認知症で介護が必要になった場合にかかる費用

月々に発生する介護費用の平均は、生命保険文化センターの調査によると約8.3万とされています。また、住宅のリフォームや介護ベッドの購入といった初期費用の平均は約74万円となっています。施設に入居する場合は、入居一時金などの初期費用と月額費用が必要になります。

関連記事:認知症介護で入居する施設の費用はいくらかかる?施設ごとの初期費用と月々の支払いを解説
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認知症介護は家族にどんな負担がかかる?

認知症で介護が必要になった場合、介護する家族には「経済的」な負担だけではなく、「肉体的」「精神的」「時間的」な負担もかかります。生命保険文化センターの調査によると介護期間の平均は61.1ヶ月(5年1ヶ月)、10年以上にわたる長期間の介護を経験している方も17.6%と少なくありません。このような長い期間、介護をするというのはたとえ家族であっても大変なことでしょう。親が一人暮らしをしている場合は、認知症の症状が進行すると様々なトラブルが発生することもあり、そのような段階では介護サービスの利用がますます必要になってきます。

関連記事:「認知症患者の方」が一人暮らしを継続する際のリスクとは?リスクへの対処方法と知っておきたいサービス
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/dementia-patients-living-alone.html

参照:生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html

「認知症保険」とは?加入するメリットについて解説

このように、仕事と介護の両立は非常に困難であることが想像できます。親が遠方に住んでいる場合は、実家まで往復する時間や費用によって、より負担が大きくなるでしょう。働きながら認知症の親を支えるには、訪問介護や介護施設などの介護サービスを利用する必要があり、そのための費用が発生します。認知症保険は、このような介護の負担を軽減するのに役立ちます。

認知症保険に加入するメリット

認知症保険に加入するメリットとしては以下のような点があります。

現金による給付
認知症保険では、認知症と診断されると保険金や給付金を受け取ることができます。経済的な負担が大きくなる介護初期段階で、必要な費用を補填できます。(保険金・給付金の支給基準は保険会社や商品によって要件が異なります)
認知症への備えに特化している
民間の介護保険と比べると、認知症に保障範囲を限定することで大きな保障を比較的安価な保険料で備えられるのがメリットといえるでしょう。
指定代理請求制度を活用できる
被保険者が認知症になり、保険金や給付金を請求できなくなっても、認知症保険であれば指定代理請求制度を活用できます。介護をする親族が保険金や給付金を受け取り、介護費用として利用することができます。

関連記事:認知症保険は必要ない?認知症保険が注目される理由と加入がおすすめな人
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被保険者である親が認知症になると、親本人の口座から預金を引き出すことが難しくなります。その場合、介護費用は子が負担せざるを得ない可能性もありますが、保険で備えておけばその心配を軽減することができるでしょう。親の認知症に保険で備えるには、指定代理請求制度を活用するなどして介護する子や家族が保険金や給付金を受け取れるようにすることが大切です。

認知症保険の加入前に確認したい注意点

親の認知症に保険で備えたいと考えている場合、加入にはいくつかの注意点があります。加入を検討している方は、以下のポイントを必ずチェックしましょう。

親子で保険の内容を十分に理解する

親本人が契約者となるケースでは、指定代理請求制度を活用するなどして子が保険金や給付金を請求できるように、親子で請求の方法について理解しておくようにしましょう。また、子が契約者となる場合は、被保険者となる親の同意が必要です。子が保険料を負担する場合でも、認知症保険の必要性や保障内容などについて双方が理解し、了承を得たうえで契約しましょう。

「指定代理請求制度」を活用する

指定代理請求制度は、被保険者本人が認知症になり、保険金・給付金の請求ができない場合に活用できる制度です。保険加入時に指定代理人を指定することで利用できます。指定代理人には以下のような条件があります。

  • 被保険者の戸籍上の配偶者
  • 被保険者の3親等内の親族
  • 被保険者と同居もしくは生計を共にする方
  • その他保険会社が認めた方

認知症と診断された時点では、本人が保険金・給付金を請求することは困難である可能性が非常に高いです。認知症保険に加入する場合は、必ず指定代理人請求制度を活用するようにしましょう。

不担保期間(免責期間)を確認する

認知症保険の場合、多くの保険商品には不担保期間(免責期間)が設定されています。保険会社によって期間は異なりますが、90日~2年間程度で設定されているケースが多いようです。その期間に認知症と診断された場合、保険金や給付金は支払われませんので注意が必要です。

まとめ

認知症保険は、認知症で介護が必要になった際の経済的な負担を軽減できる保険です。認知症に特化した商品なので民間の介護保険と比べて保険料が安価などのメリットがあります。親と同居していない方に限らず同居している場合でも、仕事をしているので自分で親の介護することが難しい、という方はぜひこの機会に将来の認知症介護について親御様と話し合ってみてはいかがでしょうか。

監修者

ファイナンシャルプランナー(CFP)
1級FP技能士 松浦建二

大手ハウスメーカー、外資系生命保険会社を経て2002年よりファイナンシャルプランナーとして活動。青山学院大学非常勤講師。

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