保険を学ぶ

認知症保険と介護保険はどう違う?それぞれのメリット・デメリットと加入の注意点

「公的な介護保険だけでは介護費用をカバーできない……」そんなときに便利に活用できるのが「民間の介護保険」です。また、民間の介護保険の中には、認知症に特化した「認知症保険」も存在します。今回は、認知症保険と介護保険にはどのような違いがあるのか、またそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかについても解説します。

※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。

認知症とは?

まずは、認知症とはどのような病気なのかについて解説します。認知症とは、脳の病気や障害といったさまざまな原因により脳の働きが少しずつ低下する病気です。認知症は、脳の認知機能に障害が起きることで日常生活に支障が出る病気の総称として使われます。

認知症のおもな4つの種類・特徴・割合について解説
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/types-of-dementia.html

認知症の介護費用と家族への影響

認知症になった場合にかかる医療費・介護費や家族への影響について解説します。

医療費・介護費用の平均

認知症にかかる費用は医療費・介護費・その他の3つに分けて考えられます。なお、医療費・介護費は保険が適用され1~3割負担でサービスを受けることができ、その他の費用は全額自己負担となります。

【医療費】
・検査費用
・治療費(薬物・運動・音楽・認知刺激など)
【介護費】
・居宅サービス
・施設サービス
・地域密着型サービス
【その他の費用】
・送迎サービス
・見守りサービス
・行方不明時捜索サービス
など

認知症になり、仮に上記のようなサービスが必要になった場合、月々に発生する費用の平均は生命保険文化センターの調査によると約8.3万とされています。また、住宅リフォームや介護用ベッドの購入などが発生した場合、約74万円の費用が発生するとされています。

参照:生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html

介護費用への備えは十分ですか?

上記の通り、介護にはまとまった初期費用や、継続的にかかる費用が発生します。要介護者本人や家族に十分な蓄えがある場合は良いものの、不十分だと経済的に厳しい状態に追い込まれる可能性もあります。認知症や要介護になった場合に備えて、何らかの対策をしておいた方がよいでしょう。

認知症に備えられる「認知症保険」「介護保険」の違いは?

認知症や介護の備えとして民間の認知症保険や介護保険があります。それぞれ、どのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。

認知症保険とは?

認知症保険の特徴や、メリット・デメリットについて解説します。

認知症保険の特徴
被保険者が認知症と診断されたら、保険金や給付金を受け取れる保険です。認知症にかかる治療費・介護費・介護のための自宅改修費などに利用できます。
認知症保険のメリット
認知症保険のメリットは、「認知症に特化した保険であること」「一時金や給付金を現金で受け取れる」という点です。認知症で介護が必要になった際に、現金を受け取れることは初期費用などの大きな助けになります。
認知症保険のデメリット
月々の保険料が高すぎる場合、家計の負担が大きくなる可能性がある点がデメリットのひとつです。保険料・払込期間・保障内容などをしっかり確認しましょう。また、要介護認定されても、認知症ではない場合、一時金や給付金を受け取れないため、あくまで認知症に特化したものであることを認識する必要があります。

介護保険とは?

次に、介護保険の特徴や、メリット・デメリットについて解説します。
(※以下は公的介護保険ではなく、民間の介護保険についての解説です。)

介護保険の特徴
被保険者が要介護認定された場合に介護一時金や介護年金等を受け取れる保険です。治療費・介護費・自宅改修費など、現金での支払いが必要になった場合の負担をカバーできます。
介護保険のメリット
介護保険の最大のメリットは40歳未満でも被保険者になれるという点です。公的介護保険の場合、40歳未満で要介護になっても保険適用になりませんが、民間の介護保険であれば介護一時金や介護年金等を受け取れます。事故や病気で若くして要介護になった際の経済的な負担をカバーできます。
介護保険のデメリット
民間の介護保険のデメリットは認知症保険と同様、保険料による家計への負担が挙げられるでしょう。また、40歳以上になると公的介護保険と民間介護保険の支払いが同時に発生するためより負担が大きくなる可能性があります。

認知症保険は認知症に特化したもの、民間介護保険は認知症を含む介護全般をサポートするものという違いがあります。介護全般をサポートする「民間介護保険」の方が良いのでは?と感じる方もいるかもしれませんが、厚生労働省の調査によると、要介護になった原因の1位は認知症となっています。

参照:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html

認知症保険と介護保険、どちらで備えるかは既に加入している保険や家計とのバランス、保障内容を考慮して決めるのが良いでしょう。

認知症保険の加入のタイミングと注意点

認知症保険の加入のタイミングや注意点について解説します。

認知症保険の加入におすすめのタイミング

認知症保険への加入は老後の生活が心配になる50~60代ぐらいで検討される方が多いようです。

保険金の受取には加入してから一定期間が必要な場合も

認知症保険のタイプによっては、待機期間が設定されています。この場合、待機期間が過ぎないと一時金や給付金を受け取ることができません。加入する際には、待機期間が設定されているか、その期間はどの程度かを確認しましょう。

商品によって保障内容が異なる点に注意

認知症保険には、認知症にかかる治療費を保障するタイプ、認知症によって第三者に損害を与えてしまった場合の費用を補填するタイプがあります。どちらを重視するか加入前に必ず確認しましょう。また、認知症以外の介護保障や死亡保障が付帯されている場合もあります。保障範囲が広い場合はその分だけ保険料が上がる場合もあるので、どのような保障内容があるのか必ず精査してください。

保険金・給付金は誰が受け取る?

保険金や給付金の受取が要介護者本人になっている場合、請求などに関わる手続きを行えない場合があります。また、認知症保険に加入していることを忘れてしまっていることもあるので、認知症保険に加入した場合は家族に必ず知らせる、受取は親族にするなどの対策を行いましょう。

まとめ

認知症保険と民間介護保険には、認知症に特化したものと介護全般をカバーするものという違いがあります。公的な介護保険以外に民間の保険で認知症へ備えたいという方は、今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。

監修者

ファイナンシャルプランナー(CFP)
1級FP技能士 松浦建二

大手ハウスメーカー、外資系生命保険会社を経て2002年よりファイナンシャルプランナーとして活動。青山学院大学非常勤講師。

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