認知症で介護が必要になった場合、施設への入居費用はどのくらいかかるのでしょうか。今回は、施設ごとの特徴と月々に発生する支払いの目安について解説します。
認知症のリスク・現状と介護負担の全体像
まずは認知症にかかるリスクとどのような介護負担がかかるかについて解説します。
認知症患者の現状と今後
厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、国内の65歳以上の認知症患者数は、2020年時点で約631万人です。高齢者人口が今後増加していくことから、認知症患者は2025年に約730万人(高齢者の約5人に1人)まで増加すると予測されています。
参照:厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/23685
認知症になった場合の介護費用
在宅介護の場合はデイサービスなどの介護サービスや、医療費・介護用品代などの支出が発生します。このような月々に発生する介護費用の平均は、生命保険文化センターの調査によると約8.3万とされています。また、住宅のリフォームや介護ベッドの購入といった初期費用の平均は約74万円となっています。要介護度が上がったり、介護期間が長期になったりすると、その分費用が増えていくと考えてよいでしょう。施設に入居する場合は、入居一時金などの初期費用と月額費用が発生します。その場合の料金については次項で詳しく解説します。
参照:生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html
認知症で介護が必要になった場合に入居できる施設は?
認知症で介護が必要になった場合、入居できる施設には以下のようなものがあります。それぞれの対象者や特徴について解説します。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方が入居できる施設です。常に介護が必要な高齢者が対象者になります。公的な介護施設で、民間の施設に比べて費用が安いのが特徴です。ただし要介護度や、家族状況などに応じて入居できる順番が決まるため、すぐに入居できない可能性もあります。
グループホーム
グループホームは、認知症かつ要支援2以上の方が入居できる施設です。5~9人程度の少人数をひとつのユニットとして共同生活を営みます。専門の職員にサポートを受けながら、入居者ができる範囲で身の回りのことを行います。その施設がある地域に住民票を持っていることが入居の条件になるため、住み慣れた地域でこれまでと近い生活を送ることができます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、自立~要介護まで幅広い方々を対象とした施設です。要介護のみの方を対象とした「介護専用型」と、自立・要支援の方でも入居できる「混合型」があります。入居費用は施設によって異なりますが、数千万円という施設も存在します。その分、サービスの充実度は高いといえるでしょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、要介護1以上の方を対象とした施設です。病気で入院していた方が退院した後、すぐに自宅での生活を送ることが難しい場合に利用できます。入居期間は通常3~6ヶ月と限られており、終身での入居はできません。あくまで在宅復帰が目標となっており、それに向けたリハビリが行われます。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院は、要介護1以上の方を対象とした施設です。特に医療ケアを必要とする、要介護度の高い方への対応が可能です。医師・看護師・薬剤師などが配置されており、医療機関に近い環境で介護を受けることができます。長期入居も可能で、看取りやターミナルケアも行われています。
認知症で介護が必要になった場合に入居できる施設の費用
認知症で介護施設に入居する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?施設の種類ごとに必要な費用の目安について解説します。※朝日生命調べ(2023年1月時点)
公共の介護施設
公共の介護施設は民間に比べると安価です。ただし、介護度の高さや医療ケアの要否が入居条件になるため、誰でも入居できるわけではありません。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 入居一時金:0円
- 月額費用の目安:5~20万円
- 介護老人保健施設(老健)
- 入居一時金:0円
- 月額費用の目安:5~25万円
- 介護医療院
- 入居一時金:0円
- 月額費用の目安:5~20万円
民間の介護施設
民間の介護施設は、公共の施設に比べると初期費用・月々の費用いずれも少し高めの金額になっています。サービスの充実度が高く、施設の数も多いため比較的入居しやすいのが特徴です。
- グループホーム
- 入居一時金:0~数百万円
- 月額費用の目安:10~25万円
- 介護付き有料老人ホーム
- 入居一時金:0~数千万円
- 月額費用の目安:15~30万円
施設以外にも利用できる介護サービス
介護施設への入居が経済的に難しい場合は、通所・訪問介護を利用する方法もあります。在宅介護で利用できる代表的な介護サービスについてご紹介します。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
認知症対応型通所介護とは、認知症の方を対象としたデイサービスです。定員が12名と小規模で、利用者1人あたりに割けるスタッフの人員が多いのが特徴です。利用者は通所施設に送迎付きで通い、可能な限り自宅で自立した生活ができるよう、運動やレクリエーションを通じて心身機能の維持回復を目指します。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護は地域密着型の訪問介護サービスです。利用者が自宅で自立した生活を24時間安心して送れるように、夜間帯に訪問介護員が利用者の自宅に訪問します。サービスには、夜間帯に定期的な訪問を受け、排泄の介助や安否確認などのサービスを受けられる「定期巡回」と、ベッドから落下して自力で立ち上がれないときや夜間に体調不良になったときに、訪問介護員を呼べる「随時対応」があります。
参照:公表されている介護サービスについて(厚生労働省)
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/
まとめ
全国には認知症高齢者を対象にした公的・民間の介護施設が多々あり、利用者の要介護度などに応じて施設を選ぶことができます。将来、自分自身や親御さまが認知症で介護が必要になったときには、今回ご紹介したそれぞれの施設の特徴などをぜひ参考にしてみてください。
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