認知症について

認知症かも…と思ったら、何科を受診する?受診すべき診療科と診断・治療の流れ

ご家族が認知症かもと思ったとき、何科を受診すべきなのかわからないとお困りの方もいるでしょう。今回は認知症が疑われる場合に受診すべき診療科や診断・治療の流れについて解説します。

認知症ってどんな病気?

まずは認知症の基本情報について解説します。

認知症の概要

認知症とは脳の認知機能に何らかの障害が起きて、日常生活がこれまで通りに送れなくなる状態を指します。認知症には中核症状と行動・心理症状の2種類があり、それぞれ異なった症状があらわれます。中核症状とは脳の神経細胞が機能しなくなることで発生し、記憶障害・実行機能障害があらわれるほか、理解力・判断力が低下します。一方、行動・心理症状はその人がもともと持っている性格・素質と環境・人間関係などが複合的に絡み合い、うつ・不安・徘徊・幻覚・行動異常などの症状があらわれます。

関連記事:認知症のおもな4つの種類・特徴・割合について解説
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/types-of-dementia.html

認知症が疑われるときは何科を受診すべき?

「もの忘れが激しくなった」など、身近な人の認知症が疑われる場合、何科を受診するべきなのでしょうか?ここからは、認知症が疑われる際に受診すべき診療科について解説します。

まずはかかりつけ医に相談を

認知症が疑われる場合、まずは患者の健康状態をもっとも詳しく知る医師に相談するのが一番です。症状が発生する前後の健康状態を踏まえて、その人の症状を診察することができます。そのため、かかりつけ医に相談するのが先決といえるでしょう。かかりつけ医が認知症の疑いがあると判断した場合は、必要に応じて専門の医療機関で検査を行います。

認知症を診察できる診療科

認知症の診断・治療は以下のような診療科でおこなえます。かかりつけ医がおらず、最初に相談する医師がいない場合は、以下のような診療科に相談するのがよいでしょう。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 脳神経内科・外科
  • 老年科
  • もの忘れ外来

認知症疾患医療センター

厚生労働省では様々な認知症施策が進められていますが、そのうちの一つに「認知症疾患医療センター運営事業」があります。全国で499カ所(令和4年10月時点)設置されており、専門医による認知症の診断や医療相談を受け付けています。都道府県ごとに認知症疾患医療センターの一覧が提供されていますので、近くの医療機関が掲載されているかチェックしてみましょう。

参照:主な認知症施策(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00006.html

認知症の診断の流れと治療

認知症はどのように診断され、治療が進むのでしょうか?認知症の診断と治療の流れについて解説します。

認知症と診断されるまで

まず初めに、診察ではこれまでの経過について聞き取りを行います。患者本人は症状に気が付いていない可能性もあるため、家族など身近な人から普段の様子について話を聞くようにします。その後、血液検査・レントゲン検査など他の病気の可能性も考慮して身体検査を行い、神経心理学検査・脳画像検査では脳の働きなどを調べます。

関連記事:認知症検査は何をする?流れ・種類・注意点についてわかりやすく解説
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/dementia-testing-what-to-do.html

認知症の治療はできる?

認知症には根本的な治療が可能なものと、そうでないものがあります。慢性硬膜下血腫による認知障害の場合は、治療を行えば脳が圧迫されていた状態を解決できるので、症状の改善が可能です。アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症などの本態的な認知症では根本的な治療は難しいものの、保険適用の抗認知症薬を服用して症状の進行を遅らせることができます。抗認知症薬には、内服薬と、皮膚に貼るパッチ型のものがあります。

関連記事:認知症は治療できる?最新の治療方法と薬について解説
https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/treatment-of-dementia.html

本人が受診を嫌がることも。対処方法は?

認知症の疑いがあるにもかかわらず、受診を拒否する場合はどうすればよいのでしょうか?対処方法について解説します。

否定したり、怒ったりしない

「もの忘れが激しくなった」「今までできていたことが出来なくなる」など認知症の初期症状が現れている場合、患者本人も自分自身の変化については理解しており、不安に感じていることが多いようです。そのような状態で、受診しないことを怒られたりすると、ますますパニックになってしまう可能性もあります。無理やり受診させようとせず、忍耐強く説得するようにしましょう。

かかりつけ医と協力する

普段から他の病気で通院している場合は、かかりつけ医から受診をすすめてもらうのも有効です。「念のため、健康診断の一環として検査を受けてみませんか」「大きな病気が隠れていないか調べましょう」など、認知症かどうかを検査するためだけではないですよ、という伝え方をすると受け入れてもらえる場合があります。

ほかの家族から伝えてもらう

夫や妻などの配偶者から「病院に行って」「検査を受けて」と言うだけでは、なかなか素直に従ってもらえないこともよくあります。そんな場合は、娘・息子など自分の子供から「長生きしてほしいから、一度病院にいってほしい」とお願いしてもらうなど、伝える人や角度を変えてみるとよい反応が得られるかもしれません。

まとめ

認知症は早期発見・治療によって進行を遅らせることが可能です。認知症が疑われる場合、かかりつけ医を通して、専門的に治療する医療機関やクリニックを紹介してもらうのがスムーズではないでしょうか。まずはかかりつけ医に相談することから始めてみましょう。

監修者

東京医科大学形成外科
医師 興津 寛

熊本大学医学部卒業。中国に留学し、漢方医学の研修を受ける。専門領域は内科、皮膚科、整形外科、形成外科

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