生活習慣病

糖尿病ってどんな病気?症状・原因・治療・予防について解説

糖尿病は国内での患者数も多く身近な病気のひとつですが、実際にはどのような病気かご存じでしょうか。
今回は糖尿病のおもな症状や原因・予防・治療方法について解説します。

糖尿病とは?おもな症状と合併症

糖尿病の概要や症状・合併症について解説します。

糖尿病とは?

糖尿病は血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続いてしまう病気で、インスリンとよばれるホルモンが血液中のブドウ糖に対して相対的に不足することで発症します。発症の原因によって、大きく2種類に分類することができます。

1型糖尿病
自己免疫疾患などにより、インスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されてインスリンの量が不足することにより発症します。子供や若い人に多く、ウイルス感染によって引き起こされる場合もあります。
2型糖尿病
遺伝や生活習慣の影響で、血糖値に対してインスリンの分泌量が減少または働きが悪くなることで発症します。日本の糖尿病患者の多くはこの2型糖尿病であるといわれています。

糖尿病患者の割合は?

厚生労働省の調査によると、糖尿病の疑いがある方の割合は男性19.7%、女性10.8%となっており、男性の方がその割合が高い傾向にあります。年齢別にみると50~60代以上で増加傾向がみられ、60代男性の約4人に1人は糖尿病を患っている可能性があると考えられます。

参照:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和元年)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

糖尿病の症状・合併症

糖尿病の症状や合併症について解説します。

主な症状
初期の段階では自覚症状を感じないことも多いですが、血糖値が高くなることで多尿・のどの渇き・疲れやすいなどの症状があらわれることがあります。
糖尿病の3大合併症
糖尿病が進行すると「糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害」という3大合併症を発症し、最悪の場合は失明や腎不全に至る可能性もあります。腎不全になると人工透析が必要になりますが、その原因の多くは糖尿病であるといわれています。
動脈硬化によって起こる合併症
また糖尿病は動脈硬化を悪化させ、脳梗塞・心筋梗塞・末梢動脈性疾患など大小の血管症を引き起こすことがあります。糖尿病性神経障害を発症している場合、心筋梗塞でも痛みを感じないことがあるため注意が必要です。

糖尿病になる原因は?

糖尿病になる原因について解説します。

1型糖尿病の原因

インスリンは膵臓で作られる成分です。膵臓が何らかの原因でインスリンを作ることができなくなることで発症します。原因ははっきりしておらず、もともと遺伝的にインスリンを作れず、1型糖尿病になりやすい体質を持っている、または何らかの原因でインスリンを作る膵臓の細胞が破壊され発症するとされています。

2型糖尿病の原因

2型糖尿病は、食生活などの環境因子と体質(遺伝)が組み合わされて発症します。2型糖尿病を発症しやすい方の特徴としては「太っている・家族に糖尿病の方がいる・40歳以上」などがあります。年齢・遺伝的な要因で糖尿病を発症しやすい方が、運動不足や偏った食生活などの習慣を続けることで発症しやすくなると考えられます。

糖尿病の予防・治療方法

糖尿病は完治させることが難しく、一度発症してしまうと、その後も定期的な通院・治療を続けなければなりません。薬物治療に加え、食事・運動療法で生活習慣を改善することが必要になります。また、糖尿病治療に必要な食事・運動療法は、糖尿病の予防にもつながります。以下で、糖尿病の予防・治療方法について解説します。

食事療法

適正な食事量
日常生活に必要な量を理解し、それ以上は食べないことが大切です。その人に合った適正な食事量は、「年齢・性別・体格・運動頻度・体質」によって異なるため、医師などの専門家に相談の上に決定しましょう。
栄養バランスを整える
適正な食事量を守るだけでなく、過不足なく栄養を摂取することも大切です。5大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)をバランス良く摂取する食習慣を意識しましょう。
塩分を控える
高血圧を予防することも重要なため、塩分も控えるように意識しましょう。推奨される摂取塩分は1日に男性8g未満、女性7g未満です。この塩分量を参考に、できる範囲で減塩にチャレンジしてください。

参照:e-ヘルスネット「糖尿病の食事」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-004.html

運動療法

有酸素運動
有酸素運動とは、ジョギング・ランニング・水泳・サイクリングなどの長時間継続して身体を動かす運動のことです。推奨されている運動頻度は「週に150分かそれ以上・週に3回以上」とされています。運動強度は中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動が推奨されており、20分以上継続して運動をすることが良いとされています。運動不足の方がこのような運動を急にはじめるのは難しいため、「まずは1日にとりあえず10分動く」など、少しでも身体を動かす時間を増やすことからはじめてみましょう。
筋力トレーニング
足・腰・背中といった大きな筋肉をメインにした筋力トレーニングが推奨されます。1セット10回程度の全身を使う筋力トレーニングを週2から3回おこなうのがおすすめです。ただ、高齢な方や糖尿病の症状が悪い場合は筋力トレーニングによって血圧が高くなるなど、血管や心臓に大きな負担をかけてしまいます。医師などの専門家に相談のうえ、適正な運動強度や時間を決めるようにしましょう。

参照:e-ヘルスネット「糖尿病を改善するための運動」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html

薬物療法

1型糖尿病の場合は薬物療法が主な治療になります。2型糖尿病では、食事・運動療法で効果が不充分な場合に薬物療法をおこないます。

飲み薬
食事や運動だけでは血糖値が下がらない場合、血糖値を下げる治療薬を飲むことで血糖値をコントロールします。飲み薬には、インスリンを出しやすく・効きやすくしたり、糖の吸収を抑えたり、排泄を高めたりするものがあります。
注射薬
注射薬はインスリン注射と呼ばれます。体内に足りないインスリンを注射によって補うことで、血液中の糖の量をコントロールします。注射は、医師にしてもらうのではなく、患者さん自身でお腹や太ももなどに注射する「自己注射」によっておこないます。

まとめ

糖尿病は発症すると、一生を通して血糖値のコントロールが必要になる病気です。はじめは自覚症状があらわれず、気付かないうちに進行している場合もあります。悪化するとさまざまな合併症を引き起こす可能性もあるため、健康診断などで血糖値の高さを指摘されたら放置せず、予防・治療に取り組むようにしましょう。

監修者

東京医科大学形成外科
医師 興津 寛

熊本大学医学部卒業。中国に留学し、漢方医学の研修を受ける。専門領域は内科、皮膚科、整形外科、形成外科

記事一覧へ