生活習慣病

飲酒と肝臓の病気の関係は?肝硬変・アルコール性肝疾患の症状・治療・予防方法について解説

お酒は肝臓に負担をかけるというのは聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?今回は、飲酒と肝臓の病気の関係の他、肝臓の病気を予防する方法について解説します。

肝臓の病気とは?

まずは肝臓の働きや病気になる仕組みなどについて解説します。

肝臓の機能と働き

肝臓は、上腹部右側からみぞおちにかけての位置にあり、内臓のなかで一番大きな臓器です。男女ともに成人になると、平均1㎏以上になり、肝臓の内部には肝細胞が約3,000億個もつまっています。肝臓には主に以下のような働きがあります。

  • たんぱく質の合成
  • 各臓器に必要なエネルギーを蓄え、血液に送り出す
  • 消化吸収を助ける胆汁をつくり、腸へ送る
  • 有害物質とアルコールの分解・解毒・排泄

肝臓は、人間の身体を作り、エネルギーを送り出す縁の下の力持ちのような働きを担っています。また、アルコールや有害物質の分解・解毒なども担っており、人間の身体に欠かせない非常に重要な臓器です。

脂肪肝

脂肪肝は、過剰な飲酒や、食べ過ぎ、肥満によって発症する代表的な肝臓の病気です。過剰な飲酒習慣により、肝臓に中性脂肪が蓄積して、肝臓が腫れたような状態になるのが特徴です。この状態ではほとんど症状はなく、断酒をすることで症状が改善します。

アルコール性肝炎

脂肪肝の状態から断酒せず、飲酒を続けたり、大量に飲酒をしたりするとアルコール性肝炎を発症します。倦怠感・発熱・黄疸といった症状が特徴で、重症の場合は死に至る場合があります。アルコール性肝炎に罹患する人は、アルコール依存症になっていることが多く、運よくアルコール性肝炎が改善しても、その後、肝硬変に進行してしまう可能性があります。

肝硬変

脂肪肝・アルコール性肝炎になってもお酒をやめられず、そのまま飲酒を続けると、肝硬変を発症する可能性が非常に高いです。肝硬変になると、肝臓の機能がほとんど失われ、腹水・黄疸・吐血といった症状があらわれます。肝硬変になると治療は不可能といわれますが、アルコール性肝硬変の場合、断酒の継続によって改善されることもあります。

肝臓病と飲酒の関係は?

肝臓病と飲酒の関係や影響について解説します。

肝臓の病気と飲酒の因果関係

肝臓の病気と飲酒には大きな因果関係があります。上述したように、肝臓はアルコールを分解する臓器です。飲酒したアルコールの90%が肝臓で処理されるため、アルコールを摂りすぎると肝臓に大きな負担がかかります。過剰飲酒が続くと、肝臓に中性脂肪が貯まり、脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変と症状が進行していきます。

アルコール性肝疾患の症状の進み方

アルコール性肝疾患は脂肪肝→アルコール性肝炎→肝硬変と症状が進行していきます。また、肝硬変によって肝臓の機能が著しく低下すると、肝臓がんになることもあります。

肝硬変やアルコール性肝疾患の診断方法

肝硬変やアルコール性肝疾患の診断方法について解説します。

飲酒の習慣を調査

問診で本人の飲酒習慣を調査します。本人だけだと過少申告をしやすいため、家族や友人などに聞き込みをすることもあります。日本酒換算で毎日平均3合以上(女性では2合/日)を3年間以上飲酒している場合は脂肪肝になる可能性が高く、毎日平均7合以上(女性では約4合/日)を10年以上続けていると、肝硬変になりやすいとされています。

血液検査

肝硬変やアルコール性肝疾患の診断のために血液検査も行います。肝機能が正常に働いているか、肝炎ウイルスに感染していないかをチェックし、アルコール以外の原因がないかを確認します。アルコール性肝炎にかかっている場合は、AST・ALT、γ−GTP上昇、高脂血症などが見られます。

腹部超音波・CT検査

問診・血液検査のほか、エコー検査やCT検査を行い、肝臓の大きさや肝臓の内面、表面の状態を確認して診断します。最近では、肝硬度測定という簡易な検査で肝硬変の程度を確認できるようになり、診断に用いられることもあります。

肝硬変・アルコール性肝疾患の治療・予防方法

最後に肝硬変・アルコール性肝疾患の治療や予防方法について解説します。

肝硬変・アルコール性肝疾患の治療方法

肝硬変・アルコール性肝疾患の治療方法としては以下の方法があります。

節酒・禁酒
アルコール性肝疾患の場合、もっとも大切な治療は節酒や禁酒です。脂肪肝などの比較的軽症の場合はアルコールの摂取量を抑えて肝臓への負担を軽減します。肝硬変など症状が進行している場合は、禁酒でアルコールの摂取を断つ必要があります。アルコール依存症と診断された場合、精神科の医師によるカウンセリング、治療などを行うこともあります。
服薬治療
節酒・禁酒のほか、肝庇護剤や飲酒欲求を低下させる飲酒量低減薬を用いて服薬治療を行います。また、飲酒後の不快反応を起こす嫌酒薬を利用して禁酒を施すこともあります。アルコール性脂肪肝・アルコール性繊維症などの比較的軽症の場合は、服薬は行わず、節酒・禁酒・食事療法・運動療法のみで改善を目指すこともあります。
精神科との連携
アルコール性肝硬変まで症状が進行している場合、アルコール依存症に陥っていることが多々あります。その場合、自発的に節酒・禁酒に取り組むことが難しいため、精神科と連携して禁酒のためのカウンセリング、治療に取り組みます。

アルコール性肝疾患の予防方法

ここからは、アルコール性肝疾患の予防方法について解説します。

飲酒の適正量を知る

まずは飲酒の適正量を知り、飲みすぎないように注意する必要があります。厚生労働省では、アルコールの適正な摂取量を以下のように定義しています。

通常のアルコール代謝機能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。

20gは「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」に相当するとされており、この量を超えると肝臓に少しずつ負担がかかると考えることができます。飲酒が好きな方でも、この基準を超えないように注意することが必要です。また、女性の場合はこの基準よりも少なめが推奨されるなど、適正量の補足事項があるため注意しましょう。

参照:厚生労働省「アルコール」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html

休肝日を作る

アルコールを毎日摂取しているという方は、休肝日を作り、アルコールを摂取しない日を設けましょう。アルコールの摂取量が減れば減るほどアルコール性肝疾患を予防できます。毎日飲酒しているという方は、脂肪肝になってしまう前に休肝日を設けて、肝臓を休ませるよう心がけましょう。

まとめ

肝臓は、摂取したアルコールの90%を処理する臓器です。過剰な飲酒によって肝臓に大きな負担がかかり、長期的に過剰な飲酒を続けると、アルコール性の脂肪肝・肝炎・肝硬変と症状が進行し、肝硬変まで進行すると治療が非常に難しくなります。アルコール性肝疾患を予防するためには、今回ご紹介した予防方法などを参考にしてみてください。

監修者

東京医科大学形成外科
医師 興津 寛

熊本大学医学部卒業。中国に留学し、漢方医学の研修を受ける。専門領域は内科、皮膚科、整形外科、形成外科

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