ピンクリボン・ミニコラム

[コラム1]「ピンクリボン運動」とは
ピンクリボン運動は、乳がんについて正しい知識を持つこと、早期発見のために乳がん検査の受診が大切なことを、より多くの女性に知ってもらおう、という活動です。
ピンクリボン運動の始まりは、1980年代米国で、乳がんで娘を亡くした女性が、こんなに辛い思いは他の誰にもさせたくないという思いを込めて、ピンクのリボンをいろいろな人に渡し、その行動に賛同した人たちが、乳がん啓発のピンクリボン運動として、周囲へ広めていきました。ピンクリボンは、今では世界共通の乳がん啓発シンボルマークになっています。
日本では、1996年に乳がんが、女性が発症するがんの1位になりました。そこで、ピンクリボン運動を知ってもらうため、また、乳がんの認知度を上げるために、2000年10月、東京タワーをピンク色にライトアップしました。近年では、10月を乳がん月間として、全国に広がっています。
[コラム2]誰にでもある乳がんリスク
これまでの研究によって、乳がんの発症や増殖には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが深く関わっていることが分かりました。一般的に、エストロゲンが分泌されている期間が長い人ほど、乳がんにかかりやすくなります。そのリスクが高いと考えられるケースは、「初潮が早い」「閉経が遅い」「妊娠・出産、授乳の経験が少ない」女性です。
また、女性は閉経した後、体内の脂肪細胞からエストロゲンを生成するホルモンが作られます。そのため、過食や運動不足などの生活習慣により、閉経後に肥満となった場合には、再び乳がんの発症リスクが上がることもあります。このほかに、習慣的な飲酒や過度の喫煙も、乳がんのリスクを上げることが分かっています。
[コラム3]乳がんリスクを抑える生活習慣
生活習慣と乳がんリスクの関係をよく理解し、睡眠や食事などバランスに気をつけて、規則正しい生活に取り組みましょう。食生活では、食べ過ぎに気をつけて、緑黄色野菜などを摂り、飲酒は控え目に。禁煙、受動喫煙の回避を心がけてください。
継続的に運動している女性は、運動量の少ない女性と比べて、がんの発症リスクが低くなると考えられています。有酸素運動で代謝を上げ、余分な脂肪の燃焼や免疫機能の活性化を促しましょう。
[コラム4]乳がんの種類
乳腺組織に発生したがん細胞は、時間をかけて増殖し、やがて組織の外にしみ出していきます。がんの広がり方によって、非浸潤がん、浸潤がんに分けられます。
非浸潤がんは、がん細胞が乳管や小葉の乳腺組織の中にとどまっている超早期の状態です。ほかの臓器に転移する可能性が低く、乳がんを切除してしまえば、命の心配は少なくて済みます。
浸潤がんは、がん細胞が乳腺組織の外に出た状態です。乳房に増殖したがん細胞によって、しこりや時としてくぼみ、ひきつれなどがみられます。がん細胞がリンパ管や血管の中に入ると、リンパ節や骨、内臓、脳などに転移する可能性があります。全身に散らばったがん細胞は、どこで増殖するか分からないため、乳がんを切除しても命の危険性は残ります。
[コラム5]乳がんと似ている病気
乳房の病気には、良性のしこりができるものや、乳がんに間違いやすい症状がでるものがあります。しこりができると、乳がんだと決めつけがちですが、医療機関で乳がん検査をして、実際に乳がんと診断されるケースはわずかです。
自己判断で不安や心配を重ねる前に、乳腺専門の医療機関を受診しましょう。
  • 乳腺症
    30~50歳の人に多く見られ、乳腺の病気の中で最も多い病気です。乳腺細胞が増加したり退縮したりして、しこりをつくります。特に治療の必要はありませんが、しこりに関して乳がんとの判別が難しいときは、組織診などの精密検査を行います。
  • 乳腺線維腺腫
    20~30歳の若い女性に多く見られる症状で、主に乳腺の分泌腺や間質細胞が増殖して、しこりのような良性の腫瘍をつくります。しこりは丸いもので、痛みはなく、指で押すとくるくる動きます。大きさによっては手術で摘出することがあります。
  • 乳腺嚢胞
    乳腺が広がって袋のようになり、そこに体液が溜まって、しこりのようになります。しこりは丸く滑らかでやわらかく、性質は良性です。痛みがあるものや大きいものは、注射器で中の液体を抜きます。ただし、嚢胞にしこりがかくれている場合は、がん細胞の有無を、採取した液体で確認します。
[コラム6]早期発見のメリット
乳がんの病状は、しこりの大きさ、リンパ節やほかの臓器への転移の有無などから、大きく5つの段階に分けられます。その中で特に早期な段階で発見されるものは、0期・Ⅰ期の2つの段階です。0期は、乳がんが発生した乳腺の中にとどまっている(非浸潤がん)状態で、Ⅰ期は、しこりの大きさが2㎝以下、リンパ節への転移がほとんどない状態です。
早期に発見して適切な治療ができた場合、入院・手術・通院といった治療期間が短く済みます。医療費だけでなく、家庭や仕事などの日常生活への影響も最小限に抑えられ、本人の身体的な負担を減らすことができます。さらに、手術や治療の方法を選ぶことができたり、再発の危険性が低かったりすることで、本人や家族の精神的負担の軽減にもつながります。
早期発見の重要性やメリットを理解し、定期的な乳がん検査の受診や毎月のセルフチェックを心がけて、乳房や命とともに今の生活も守りましょう。
[コラム7]乳がん検査を受けましょう
乳がん検査では、まず、乳腺専門の医師による問診や視触診があります。次の段階に、マンモグラフィー(レントゲン)やエコー(超音波)を使った検査や、場合によってはMRIやCTによる画像検査があります。
画像による乳がん検査では、マンモグラフィーの有効性が認められています。ただし、妊娠している人や乳腺密度が高い高濃度乳腺の人には、エコーのほうが向いています。
乳がん検査は、職場の健康診断などにオプションで追加し、受診することができます。また、40代以上の女性には、自治体から2年に一度配布されるクーポンで、マンモグラフィーによる乳がん検診が受けられます。
[コラム8]乳がんは自分でも見つけられる
乳がんは、本人が乳房のしこりや異変に気づくことができるがんです。
早期発見のためには、異常のないときの乳房の状態をよく観察して、少なくとも月に1回は、自分でチェックすることが大切です。生理のあと1週間ほど経って、乳房の張りが落ち着くときに、丁寧に調べてみましょう。
[コラム9]セルフチェックのポイント
セルフチェックでは、しこりだけではなく、ただれや分泌物、へこみやひきつれなどがないかを確認します。入浴の時はもちろん、立ったり寝たりした状態でもチェックしましょう。
入浴時には、指の腹を使って、乳房を軽く押さえながら渦巻き状に指先を滑らせ、しこりがないか、乳房全体を調べます。鏡の前では、自然な状態で立ち、両方の乳房に違和感がないかよく観察します。さらに、両手を上げ下げして、正面・側面・斜めからもよく見ます。乳頭を軽くつまみ、血のような分泌物がでないことも確認しましょう。
仰向けに寝た姿勢では、乳房の内側や外側を、腕を上げたり下げたりして、しこりがないか、指の腹でまんべんなく触って調べます。左右の脇の下も、必ず確認しましょう。
[コラム10]いろいろな検査で分かる乳がんのこと
一般的な乳がん検診は、次のような検査を受けます。
  • 視診
    乳房の表面の肌に、赤みやただれ、ヒキツレがないか、乳頭から分泌物がないかを、専門医が目視で確認。
  • 触診
    乳房にしこりができていないかどうかを、専門医が手で触って確認。
  • 画像診断
    乳がんが疑われるような部分や異常がないかを、マンモグラフィーやエコーを使って、乳房の内部を画像に映し出して確認。
これらの検査で、乳がんと疑われる部分がある場合には、精密検査でさらに詳しく調べることになります。
  • 細胞診
    乳腺に注射針程度の細い針を刺して細胞を採取。乳頭からの分泌物がある場合は、乳頭にガラス板を押し付けて細胞を採取。
  • 針生検(組織診)
    局所麻酔をして、直径1.6~2.1㎜のやや太い針を乳腺に刺して、組織ごと採取。
これらの方法で採取された細胞や組織を、細胞診専門医や病理医が顕微鏡を使って観察し、乳がんかどうかを最終的に判断します。
(監修:認定NPO法人J.POSH)