[コラム1]「ピンクリボン運動」とは

“ピンクリボン”とは、乳がん撲滅を願って、その早期検査・発見を啓発する運動のシンボルマークです。このピンクリボン運動は、80年代のアメリカで乳がんにより亡くなられた患者さんのご家族が「乳がんで悲しむ人をなくしたい」との願いをこめて作ったリボンから始まったといわれています。
アメリカでは、93年に10月第3金曜日を「ナショナルマンモグラフィーデイ」と制定されるなど、乳がんに対する人々の意識が変化し、現在では欧米でのマンモグラフィー受診率は70~80%となっています。このような運動の結果、欧米の乳がん死亡率は90年代から徐々に減少しています。
一方、日本でも2000年頃から乳がん啓発に取り組むNPOが登場し、『ピンクリボン運動』を通じて乳がん検査の重要性、早期発見・治療の啓発に取り組むなど、その大切さは次第に広く認識されるようになっています。

[コラム2]乳がんの『予防法』ってなあに

現在の医学には、乳がんを確実に予防する特別な方法はありません。乳がんにかかる可能性は、残念ながら誰も否定できないのです。
乳がんの発生は、20歳以下でもまれに発生しますが、通常は20歳過ぎから徐々に認められるようになり、30歳代になるとさらに増え、40歳代後半から50歳代全般に一番多く認められます。なかには、80歳代になって罹患という方もいます。つまり何歳になっても油断大敵なのです。
乳がんの『予防法』はありませんが、早期発見は可能です。早期(0期、1期)の乳がんなら、90%近くが助かります。そのためには、月1回の自己チェックと定期的な乳がん検査を受けることが大切なのです。マンモグラフィーや超音波検査の画像診断は、自己チェックや医師による視触診ではわからない1㎝以下の小さいがんやしこりも見つけることができます。特に40歳以降の方は、毎月の自己検診とともに最低でも2年に1回の乳がん(マンモグラフィー)検査をかならず受けましょう。

[コラム3]乳がんにかかりやすいタイプ

女性の乳房は乳腺という組織とそれを支える間質や脂肪組織などで構成され、そこに血管や神経も通っています。乳がんはこの乳腺組織である小葉という乳汁を作る組織と、乳汁を乳頭に運ぶ乳管組織をおおう上皮細胞から発生します。
近年、乳がんの罹患数は急増しており、日本人女性の約11人に1人が発症、さらに患者さんの6~7人に1人が命を落とすといわれています(9割近くの乳がんは乳管から発生します)。
乳がんの発生には女性ホルモンであるエストロゲンが関わっていることが分かっています。そのため初経年齢が早い方、出産未経験者、高年初産、閉経年齢が遅いといったエストロゲン濃度の高い状態に長くさらされる方、また閉経後は脂肪組織から産出される酵素でエストロゲンが変換・合成されるため、閉経後の体脂肪の多い方なども発症リスクが少し高くなります。
ごく僅かですが体質遺伝で発症する場合もあるため、家族に特殊なケースの乳がん患者さんがいる方も要注意。しかし基本的には誰にでも比較的高い発症のリスクがあります。20歳をすぎた方は、気を付けましょう。

[コラム4]乳がんの2つの種類

乳がんはその浸潤の程度から大きく2つの種類に分けられます。1つが乳腺を構成している乳管や小葉の内部で留まっている「非浸潤がん」、もう1つは乳管や小葉の外側に広がった「浸潤がん」です。非浸潤がんは極めて初期のがんですから、この段階で発見して手術すれば95%の確率で10年生存可能と言われています。
非浸潤がんの時期をすぎ、浸潤がんに進行したものの多くはそのまま放置すると次第により鮮明に「しこり」の形を作ります。進行するに従い、がん細胞はリンパ管や血管の流れに乗って全身に広がりますから、転移や治療後の再発の可能性も高くなります。浸潤がんは治療後も十分な注意が必要といえるがんなのです。
一方、非浸潤がんは完治し易いとは言え安心できません。この場合、多くは“しこり”などができる前の状態ですから、自己診断ではまず見つけられません。乳腺の専門科でマンモグラフィーや超音波などの検査を受けて初めて発見できます。成人を過ぎた女性は定期的な検査を心がけて早期発見、早期治療に努め、大切な命を守りましょう。

[コラム5]乳がんの進行度とは

乳がんはしこりの大きさやリンパ節への転移の状況、乳房から離れた臓器に転移しているかなどで、進行度と治療の方法が異なります。
早期の乳がんで病期0といわれる非浸潤がん(乳管内がんや小葉内がん)は最も予後がいいタイプ。次に直径2センチ以下のしこりで腋窩(わき)のリンパ節が触れない病期1までは治りやすいがんです。しかしこれよりも病期が進むとしこりが大きくなったりリンパ節の転移の程度もひどくなり、病期4になると骨や肺、肝臓から脳など離れた臓器へも広く転移して予後が悪くなります。
基本的に乳がんはおとなしいがんといわれ、早期なら90%以上の方が助かります。しかし検査を嫌がる人が多く、進行した状態で発見されると大きなリスクを伴うことになるのです。手遅れになってつらい治療を受けるより、早期発見、早期治療の重要性をよく理解し、積極的に検査を受けましょう。

[コラム6]早期発見で高い治癒率

がんの多くは早期発見、早期治療であるほど予後がいいものです。特に乳がんはその傾向が顕著で、病期0までの超早期なら10年生存率が95%、病期1でも約90%というデータがあります。
乳がんの予後は、早期発見と適切な治療さえ施せば、ほぼ治癒も可能なものです。しかし正しい知識を持って受診に臨む人はまだまだ少ないといえます。
早期発見、早期治療ができれば、手術の傷跡はほとんど目立たずにしかも小さくてすむことも多いのです。乳がんはほかのがんと違って、多くの場合、増殖のスピードが比較的緩やかで、早期なら乳管の内側に留まっているケースが多いのです。
そこで30代では、視触診と超音波を組み合わせた検査を(ケースに応じてはマンモグラフィー検査を)。そして乳がん発症の好発年齢に入っていく40代になったら、少なくとも2年に1度のマンモグラフィー検査を(気になる方は年1回のマンモグラフィーと超音波検査を)受け、たとえ発症しても適切な治療で早い回復を実現しましょう。

[コラム7]乳がん検診のながれ

早期なら完治も可能な乳がんは、定期的な検査で発見の時期を早めることが大切です。検査の手順はまず問診、そして乳房の形や皮膚、乳頭などに異常がないか目で確認する視診、さらに手で触れてしこりの有無を調べる触診が行われます。
次に極小のしこりや微細な石灰化も発見できるほど精度が高いマンモグラフィー(X線撮影)で、これは現在の乳がん検査には欠かせません。また痛みもなく安全な乳房超音波検査(乳房エコー)は、しこり内部の構造が分かるため、マンモグラフィーと組み合わせて検査すると、より詳しく診断がつけられます。
しこりや異常所見があると、次に細い針でしこりの細胞を取る穿刺吸引細胞診が行われます。悪性の場合はこの検査が簡便で診断に効果的です。さらに太い針で組織を取る針組織診を行うこともあります。いずれも乳がん検査は決して怖いものではありませんから、ぜひリラックスして受けてください。

[コラム8]マンモグラフィー検査を楽に

ピンクリボン運動が功を奏し、乳がん検査の大切さを認識する人が増えてきました。しかし相変わらず日本人女性の乳がん検診率は、先進諸国に比べて格段に低いままで、罹患率の増加も止まる気配がありません。
検診率が低い理由の一つとして、マンモグラフィー検査で乳房を圧迫する痛みへの不安や恥ずかしさが挙げられます。そのため受診を尻込みする患者さんが多いのですが、乳房がはさまれている時間はほんのわずかです。痛みには個人差があり、つらくない人もいます。
受診のコツは、まず乳房が張りやすい生理前を避けます。妊娠可能な人は生理開始後10日以内がよいでしょう。乳房を押し広げることにより、より少ないX線量できれいな画像になります。乳房を板にはさまれるとき、肩の力をぬいてリラックスしてください。装置の角に当たって痛いときや、引っ張られすぎや、圧迫が強すぎてつらいときは、技師にきちんと伝えてください。

[コラム9]自己チェックはいつでも自分でできる検診法

乳がんは早期発見すれば10年生存率90%以上も可能な病気です。定期的な受診はもちろんですが、月に1回ほど自己チェックすることで、より早く見つけることができます。生理前は乳房が張ってチェックしづらいので、生理後4日~1週間目の入浴時がよいでしょう。
鏡の前に立ち、両腕を上げ下げして乳房をよく観察します。形やひきつれくぼみ、左右の乳頭の位置などがおかしくないか、また赤みや腫れ、ただれ、乳頭の湿疹など目で確認してください。日ごろから、自分の普段の乳房の形や状態を把握しておくことは大事です。
目で観察した後は、指に石けんを付けて小さな円を描きながら乳房を触診します。特にがんができやすい乳房外側の上部は念入りに。腋(わき)の下のしこりも調べましょう。乳房が大きい人や若い人は、仰向けで調べると分かり易いです。乳頭部分はちょっとつまんでみて、分泌物などが出ないかチェックします。異常があるときはすぐに専門医を受診してください。

[コラム10]自治体の検診を利用する

乳がん検査に興味を示す女性が少しずつ増えています。しかし分かってはいても、検査に行く勇気がない。そういう方のために、各自治体では一定年齢以上の女性に対して検診サービスを行い、受診のきっかけとなっています。
乳がん検査の費用は自治体によって異なります。お知らせは広報誌によるときもありますし、また対象者に自治体から通知が届く場合もあります。検査内容も昔は視触診だけでしたが、現在ではマンモグラフィーを使って詳しく行っている自治体が多くなっていますから、ぜひ一度体験してみるといいでしょう。これをきっかけに最低でも2年に1度は受診し、自分の体の状態をきちんと把握してください。
日常的な自己チェック、そして定期的な検査で早期発見につなげましょう。乳がんは早期発見、早期治療すれば治る見込みの高いがんです。正しい知識を持って対処することがあなたの健康を守ります。

(監修 NPO法人J・POSH・日本乳がんピンクリボン運動)