平成15年度事業報告書(事業の経過および成果)

I.平成15年度事業報告書

〔平成15年4月1日から平成16年3月31日まで〕

1.事業の経過および成果

(1)経営環境

 平成15年度のわが国経済は、米国、中国向けの輸出や企業部門の設備投資が増加し、ゆるやかな回復基調となりました。また、雇用・所得環境や個人消費についても下げ止まりの動きが見られ、景況感は総じて改善傾向となりました。
  市中金利は、景気の回復基調を受け上昇に転じ、株価についても企業業績見通しの好転を受け大幅に上昇しました。また、外国為替市場では、年度下期に対ドルで円高が進みました。
  このような経済情勢のもとにあって、生命保険業界においては、年度前半には、既契約の予定利率引下げを可能とする改正保険業法を巡る一連の議論のなかで、個人保険契約者の生命保険離れが一時的に加速しました。また、1月には、簡易保険を取り扱う日本郵政公社から民間生命保険会社の定期保険特約付終身保険に類似した商品が発売されるなど、競争環境が激化しました。
  一方、少子高齢化の進展などにより、社会保障制度に関する議論が高まるなかで、医療・介護・年金など「長生きするリスクへの備え」に対するお客様の関心が一層高まりました。このような情勢のもとで、医療・介護保障などのいわゆる第三分野商品や個人年金商品の販売面においては、一部に明るい兆しも見られました。

(2)事業の経過

 このような環境のなか、当社は、「お客様に最も信頼される生命保険会社」を目指して、平成14年2月に策定した経営改革プラン「朝日生命プロジェクトR」の総仕上げに取り組むとともに、平成15年1月に発表した新経営戦略「サクセスA」にもとづく数々の施策を積極的に展開しました。
  • [二大経営改革の成果]
     「朝日生命プロジェクトR」で計画した経営資源のリストラクチャリングは、平成15年3月までに完了しましたが、その後も引き続き経営の効率化を進め、事業費の一層の削減に努めました。
    また、資産の健全性向上に向けた取組みでは、国内株式残高の圧縮と株価回復により、株式含み損は約50億円まで減少し、ほぼ含み損の一掃を図ることができました。
    このように、経営改革の第1ステージである「朝日生命プロジェクトR」は、平成16年3月末をもって計画期間を満了し、ほぼ計画どおりの成果を達成しました。
    一方、お客様満足度と収益力の一層の向上を図るため、経営改革の第2ステージとして策定した新経営戦略「サクセスA」では、業務運営指標を従来の保険金ベースから、より収益との連動性が高い保険料ベースに移行することをはじめとした新たなビジネスモデルのもとに、以下に記載する数々の施策を積極的に展開しました。
    この結果、3月には「保険王」の累計販売件数が110万件を突破したほか、契約の継続率や営業職員の育成率が向上するなど、個人保険分野における収益力向上につながる成果が現れはじめました。
  • [商品開発]
     4月には、介護保障に重点を置いた「介護保障保険」を開発し、従来の「新総合医療保険」などと組み合わせることにより、お客様ご自身のための介護・医療保障を確保できるシニア層向け専用商品「保険王 カイゴとイリョウ」を発売しました。
    10月には、従来の通院保障の内容を充実させ、ケガによる通院は入院の有無にかかわらず保障し、病気による通院は退院後の通院に加えて入院前の通院も保障する「新通院特約」を発売しました。また、お客様ニーズに一層柔軟に対応するため、「新総合医療保険」および「新がん医療保険」について、保険料の払込みを一定期間で終了し、一生涯の医療保障を確保することができる「終身タイプ(有期払)」の取扱いを開始しました。
  • [営業・お客様サービス]
     4月には、「お客様サービスNo.1」を目指し、お客様との双方向コミュニケーションの充実に努めるとともに、これまで以上にお客様の声や社会の評価に真摯に耳を傾けていくため、「ソサイエティ&カスタマーコミュニケーション統括部門」を新設しました。
    また、「お客様サービスセンター」について、フリーダイヤル化のうえ、円滑なお客様対応を行うコミュニケーターを増員するなどの機能強化を図りました。
    さらに、お客様サービスの推進を専門職務とする「お客様サービス職」を全支社に新たに配置するとともに、4月以降、保全サービス専門スタッフである「サービスメイト」などを段階的に拡充しました。
    10月には、お客様の声を広く収集し、経営戦略および業務運営に反映させることにより、お客様満足度のさらなる向上を図ることを目的として、社長を委員長とする「お客様満足度向上委員会」を発足させました。
    12月には、営業職員のお客様に対するサービスや、お客様へのアクセスの充実を支援するための情報システム「AICOS」の稼動を開始しました。
    1月には、お客様のライフスタイルの多様化に対応するため、お客様のニーズの多い地域において、営業職員による土曜日の訪問業務を開始しました。
    3月には、「お客様満足度向上委員会」におけるお客様の声などの分析を踏まえ、お客様満足度の向上に全社を挙げて取り組むため、「お客様へのアクセス強化」、「お客様からの申出に対する対応力の向上」、「お客様への利便性の提供」および「CS(お客様満足)取組推進体制の確立」を平成16年度の重点項目と定めました。
  • [資産運用]
     資産の健全性向上を図るためリスク管理に留意する一方、収益性向上の観点から資金の効率的配分に努めました。
    各資産の運用状況は、国内債券については、円金利資産の中核として残高の積み増しを行いました。貸付金については、企業の資金需要の低迷から、残高は減少しました。
    国内株式については、価格変動リスク削減の観点から、前年度に引き続き、残高を圧縮しました。外国証券については、為替リスクをヘッジした外国債券運用を中心に行い、運用収益の増大に努めました。

(3)事業の成果

平成15年度の事業の成果は以下のとおりとなりました。
  • [契約概況]
     個人保険・個人年金保険について、保険料を基準とした業績指標である年換算保険料の合計では、新契約高(転換純増含む)が319億円(対前年度比102.3%)となり、解約・失効高が577億円(同67.7%)となったことなどから、年度末保有契約高は5,779億円(同91.7%)と523億円の減少となりました。また、個人保険・個人年金保険のうち、新経営戦略「サクセスA」で本格展開した第三分野においては、新契約高が186億円と対前年度比185.6%となったこともあり、年度末保有契約高は1,198億円(同104.3%)と49億円の増加となりました。
  • [年換算保険料ベースの業績]
  平成15年度 前年度比 平成14年度
個人保険・個人年金保険 新契約高 319億円 102.3% 312億円
解約・失効高 577億円 67.7% 852億円
年度末保有契約高 5,779億円 91.7% 6,303億円
うち第三分野 新契約高 186億円 185.6% 100億円
解約・失効高 110億円 79.0% 140億円
年度末保有契約高 1,198億円 104.3% 1,148億円

注1.年換算保険料とは、保険料の払込方法に応じ、年払は1倍、半年払は2倍、月払は12倍して、1年あたりの保険料に換算した金額です。

注2.年換算保険料の算出にあたっては、保険王の積立部分および一時払契約を除いています。

注3.第三分野では、医療・介護等を保障する主契約および特約を計上しています。

一方、個人保険・個人年金保険の保険金額の合計では、新契約高(転換純増含む)が3兆4,680億円(対前年度比44.5%)となり、解約・失効高が8兆2,724億円(同75.7%)となったことなどから、年度末保有契約高は61兆9,857億円(同89.1%)と7兆5,495億円の減少となりました。 団体保険は、前年度に引き続き事業縮小の方針にもとづいた対応を進め、年度末保有契約高は2兆720億円(同27.1%)と5兆5,602億円の減少となりました。 団体年金保険は、前年度に引き続き本体としての事業の撤退と子会社等への移管を進め、年度末保有契約高が1,549億円(同77.6%)と446億円の減少となりました。
  • [収支概況]
     経常収益は、1兆3,016億円(対前年度比67.2%)となりました。このうち、保険料等収入は、保有契約高の減少および団体保険と団体年金の事業縮小により、6,794億円(同88.4%)となりました。また、資産運用収益は、利息および配当金等収入や有価証券売却益が減少したことなどから、2,266億円(同80.1%)となり、その他経常収益は、責任準備金戻入額が減少したことから、3,954億円(同44.6%)となりました。
    経常費用は、1兆2,380億円(同64.0%)となりました。このうち、保険金等支払金は、解約返戻金が減少したことなどから、9,593億円(同63.7%)となりました。資産運用費用は、有価証券売却損・評価損が減少したことから、855億円(同44.2%)となりました。事業費は、経営改革プラン「朝日生命プロジェクトR」による抜本的な経営改革の結果、326億円減少して1,343億円(同80.4%)となりました。
    この結果、経常利益は前年度より619億円増加して、636億円となりました。
    特別利益は、97億円(同30.5%)、特別損失は、190億円(同77.4%)となり、法人税等調整額は、財務の健全性に資する観点から、繰延税金資産について保守的な計上を行ったことから、341億円(同1,255.1%)となりました。
    以上の結果、当期純剰余は前年度より139億円増加して197億円となり、当期純剰余に前期繰越剰余金などを加え、当期未処分剰余金は681億円となりました。
    なお、生命保険本業の期間収益を示す指標の一つである基礎利益は、団体保険事業縮小などの影響により669億円(対前年度差△87億円)となりました。
  • [資産および負債・資本の概況]
     年度末総資産は6兆4,473億円(対前年度比97.7%)となり、このうち有価証券は3兆9,239億円(総資産に占める割合60.9%)、貸付金は1兆5,718億円(同24.4%)、不動産および動産は5,887億円(同9.1%)となりました。
    負債の合計は、6兆1,403億円(対前年度比94.6%)となり、このうち責任準備金は5兆6,768億円(同94.4%)となりました。
    資本の合計は、3,070億円(同284.1%)となりました。
    なお、保険会社の健全性を示す行政監督上の指標であるソルベンシー・マージン比率は560.3%(対前年度差199.9%)、実質純資産額は3,498億円(同1,135億円)となり、前年度末より大幅に改善しました。

(4)会社が対処すべき課題

 少子高齢化に伴う生保マーケットの構造変化、規制緩和の進展、価格・商品・サービス競争の激化など、生命保険業界における競争環境は一段と厳しさを増しております。
 こうした状況のなか、当社は、本格展開2年目となる新経営戦略「サクセスA」の完遂に向け、収益力とお客様満足度の向上への取組みをさらに強化し、「お客様に最も信頼される生命保険会社」を目指してまいります。
 具体的に、営業面においては、医療・介護保障などのいわゆる第三分野商品による保障中核層およびシニア層の2大マーケットに対する取組強化、コンサルティング力の高い営業職員の多数育成、お客様へのアクセス強化を通じたご契約の継続率の向上を図ってまいります。
 また、資産運用面においては、リスクとリターンの適切な管理と円金利資産を中心とした資金の効率運用を通じて、ポートフォリオの健全性および収益性のさらなる向上に努めてまいります。
 さらに、お客様サービス面においては、「お客様満足度向上委員会」で定めた重点項目への対応に鋭意取り組んでまいります。
 これらに加えて、「コンプライアンス会議」の機能強化を図るとともに、各組織のコンプライアンス推進状況の確認や改善指導などを行う「シニアコンプライアンス・オフィサー(SCO)」を本社に新たに配置するなど、経営の最重要課題のひとつであるコンプライアンスのさらなる徹底を図ってまいります。
 そして、今後とも、当社の経営の基本理念である「まごころの奉仕」に徹して社会の負託にこたえる所存であります。
以上